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テニプリ
ジロ跡


夢の中の彼は、とても美しく笑う。

いや、微笑むという方が正しい表現かもしれない。

そう、彼は俺に微笑みかけるんだ。

まるで神様のように。




俺だけの、神様のように。



























「ジロー、起きろ」


ゆっくりと目を開けると、そこには神様、もとい跡部の姿があった。

「珍しいね、今日は跡部が起こしにきてくれたんだ」

「ああ。今日は樺地休みなんだよ」

跡部はめんどくさそうに前髪をかきあげて、ふぅ…と深いため息をついた。

「早く起きろ。俺はもう行くからな」

「あっ、待って!」

気づいたら、跡部のジャージの裾を握っていた。

「離せよ」




顔をあげると、ほら、…絶望的な世界。


夢の中の俺の神様は、とても優しくて、甘い香りがして。

「めんどくせぇな。待っててやるから離せ」

「眉間のしわすげーC」

「るせぇ」

俺の神様は、こんな顔しない。

だって、俺の中の神様は、俺を愛してくれるから。


「まだ眠いんだよ〜」

そう言って強く跡部のジャージの裾を引っ張る。

短い呼吸音と共に、跡部が俺の胸の中に倒れこんできた。



あたたかい。


やわらかい。


甘い香りがする。


現実世界の俺の神様。



「なにすんだよ、まったく…」



俺は、ずるいんだよ神様。

本当にずるい人間なんだ。



跡部が俺のこと好きになってくれないって知ってるから、夢の中に逃げたんだ。


だって、夢の中の彼は、俺を愛してくれるから。


心だけでもこの苦しさから救われたかったから。

もう泣きたくなかったから。





「おやすみ、あとべ」








(二人でゆっくり目を閉じて、夢の中でまた会おう)

(…誰が好きでもない奴と添い寝なんかするかよ…、気づけ馬鹿)




END



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