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テニプリ
ブンニオ(82前提)


部室の更衣室にて。



「おー、ブン太。今日は早いんじゃのう」

「おう、なんか早く起きちまってよ…って、おい仁王、首」

「おん?……あ」

仁王は少し頬を染めてそこを手で隠した。

赤いしるしは、独占欲の現れ。


繋いでおくための無言のルールなのだと前誰かが言っていた気がする。

「悪いのぅ、教えてもらって。気づかんかったわ」


「仁王」

自分の声が室内に響く。

仁王の眼が見開かれた。

「仁王」

了解も得ずに、黙って抱き寄せると、慌てた様に仁王の腕が上下に動く。

「ブン太…?なぁに?ちょ、離して欲しいんじゃけど…。柳生、待ってるしのぅ」

「……仁王」

そっと首筋に唇を当てて、舌を這わせる。

小さな息遣いとともに、仁王が震えた。

「っ…!!」

口のなかに鉄の味が広まる。

「どう?いてぇだろぃ?」


赤いしるしは独占欲の現れ。

柳生のつけた独占欲は、たった今俺が上塗りしてなかったことにしてやった。


残念だったな。


欲なら、焦がれる感情なら、俺の方が数段上なんだよ。



「ブン…」

「俺のロッカーに絆創膏入ってるから使え。じゃあ、俺先いくから。お前もその顔なおったら出て来い」


赤く色づいた目尻と頬をジャージの袖で隠して、仁王が呟いた。

それを聞こえなかったことにしてその横を通り過ぎ、ステンレス製のドアノブを回す。


もう一度、仁王が呟いた。

少しの嗚咽と、いつも通りの声音。

嘘をつくとき、こいつは声が少し低くなる。


どうやらこれは本心のようだった。










「……お前なんて、最低じゃ」



報われないのなら、いっそ思い切り壊してみようか。


ドアを閉めてコートに目をやると、神の子と紳士が何か話をしていた。


「おや、丸井くん。今日は早いのですね」

いつもと変わらない、やわらかな笑みの紳士。

仁王はこんな奴のどこが。




湧き上がる黒い感情は、意味もなく煮え立ち揺れる。






永遠に報われない俺の恋が、今動き出した。



END




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あきゅろす。
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