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忍跡(ミナギさん)

忍足のことが好きだった。


いや、だった、じゃない。

今でも好きだ。

「跡部」

忍足の声が好きで、忍足の手が好きで、忍足の全てが好きで。


なのに。


「俺、岳人と付き合うことになってん。跡部、…ありがとうな」

受話器がやけに冷たい。

それを持っている方の腕が、カタカタと震えているのがわかった。


付き合う。

そうか、あいつら、やっとくっついたのか。


そうか、俺の片想いはようやく終わったのか。



「良かったじゃねぇか、アーン?」


「ほんま堪忍な、助かったわ」

「俺様が手助けしてやったんだ、叶わねぇわけねぇだろ」

「っはは、そうやなぁ」


意気地なし。

心の中で罵倒してみる。

なぜ背中を推したんだ。

なぜ好きだと言えなかったんだ。

なぜ、俺じゃダメなんだ。

言えなかった言葉が首を締めてくる。

もういっそ、このまま酸素を奪われたら良いのに。

「ありがとうな、跡部。じゃあまた明日な」


ぶつり。


電話が切れると同時に発した言葉は、多分一生届くことはないのだろう。




なぁ、好きだったんだぜ忍足。


今も昔もこれからも。



明日はどんな顔して会えば良いのか、正解はまだ見えない。





『好きだ』







(切れる間際に、なんか聞こえたけど…まさかな)


(跡部は、俺が岳人とくっついとってもなんも思わんよな…)


END



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あきゅろす。
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