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長編
変わった日常
あれから京子ちゃんと別れて帰った。
その日は、一日中飽きもせずに右手を眺めていたことを覚えてる。
おかげでビアンキに気持ち悪がられた。
と同時に、一発殴られた。おそらく、ハルの件だろう。
当然のことだったよなぁ、と今になって思う。
オレはハルにどんな顔をして会えばいいんだろう。
京子ちゃんにも、恥ずかしくてどんな顔をすればいいか分からない。
「いってきまーす。」
いつも通り、少し遅刻ペースな時間に慌てて家を飛び出した。
「おはようございます!十代目!」
「おはよう、ツナ!」
「おはよう、二人とも!」
何だかこの二人を見ていると不思議な疑問が芽生える。
それは、山本は獄寺君が自分を好きだということを知っていたのかという疑問を持っているのではないかという疑問だ。そしてその逆、獄寺君は山本が自分を好きだということを知っていたのかという疑問を持っているのではないかという疑問も持っている。
文法的に訳が分からなくなりそうな文章だが、要は自分らが両想いだったということをオレが知っているのかという疑問を持っているのではないかという疑問ということだ。
いや、別に知っているからといって何か変わるのだろうか。
二人とオレの関係が変わることもないだろうし、きっと今まで通り何か困ったことがあれば相談もしてくれるだろう。
今までと、同じじゃないか。
「ツナ君、おはよう!」
「お、おはよう、京子ちゃん。」
京子ちゃんに会えた。でも、どんな顔をすれば…

「ツナ君?学校遅れちゃうよ?」
「十代目?」
「ツナ?」
「ううん、何でもない。」
みんなが不思議そうな顔をしていた。
そんなに変な顔をしていたんだろうか。
「十分変な顔だぞ。」
「ブッ!リボーン!って、いちいち蹴るなよ!!」
「ほれ、写真撮ってやったぞ。」
「?」
オレは恐る恐るリボーンの差し出した画像を見る。
「んな!」
これのどこが変な顔だ!と叫ぼうかと思ったが、よく見れば間抜けな表情だったので言い返せなかった。
「デレデレしやがって。バカツナが。」
「わーわーわーっ!!!!」
とオレは腕を振り回しながらリボーンの言葉を掻き消そうとした。
「アハハハッ!」
後ろで京子ちゃんが笑ってた。
「ハハ…」
オレも、つられて笑った。
そして感じる。
黒川の視線。
ゾッとする様な冷たい視線で、一気に身体が凍りつく。
「京子を泣かせたら承知しないわよ」といわんばかりの視線だった。
それに「わかってるよ」というような顔をし返した。すると黒川は少し驚いた表情をして、顔を背けた。
オレは黒川のマネをして山本に「獄寺君泣かせたら怒るよ?」という視線を送ってやった。
でも山本は一向にオレの方を向こうとしない。山本の視線の先には獄寺君しかいなかった。
この分だと心配はいらないな、とオレは浅く息を吐いた。
ビュウッ と強い風が吹いた。
春はやけに風が強い。
だけどどこか清々しい、春の風。
「早く行かないと、雲雀さんに怒られちゃうよ。」
今日も、いつも通りの毎日が続いてく。
それでも、明確に変わっていく。




ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ツナが山獄の恋を応援するというのは割とあるシチュエーションだと思うんですが、ふと「『じゃあお前はどうなんだよ』と山本に聞かれたら…。」と思いまして、この話を書き始めました。
最終的にハルだけが報われないという悲しい結果になってしまいましたが、別に私はハルが嫌いなんじゃないです。
むしろ一生懸命で、はひーっなハルが大好きです。
後半なんだか内容が薄くなっていることにはノータッチで…。(クライマックスまでしかネタを考えてなかったんです。←)

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あきゅろす。
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