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長編
それぞれの告白〜“いつか”は“今”〜
ハルが、頑張ってくれた。
ハルが、応援してくれてる。
だから、行かなきゃ。
京子ちゃんの所へ。
どうか、京子ちゃんに会えますように…。
(いつもおつかいで通る道になら、居るかも…。)
偶然と必然を組み合わせて、どうにか京子ちゃんに会えるように、と町内を全力で走った。
(京子ちゃん…。)
スーパーへの道には、居なかった。
(京子ちゃん…。)
商店街にも、居なかった。
(京子ちゃん…。)
通学路にも、居なかった。

京子ちゃん…っ!!

「あれ?ツナ君?」
「きょ…こちゃん…?」
漸く、会えた。
たまたま、京子ちゃんの家に向かう途中の河原で。
疲れて笑っている膝を、肘を張って支える。
「どうしたの?そんなに走って。」
オレは息を激しく切らしていて、上手く声を出せなかった。
「大丈夫?」
ゆっくりと深呼吸を繰り返し、鼓動と呼吸を元に戻す。
「うん。ありがとう。」
激しい運動をして熱くなった身体を、少し強めの風が冷やす。
「京子ちゃんに、話があって…。それで探してたんだ。」
「え、私?」
驚いた調子で京子ちゃんは自分の顔を指差した。
「うん。」
いつかの、見覚えのある河原。
そうだ…ここは未来で京子ちゃんに全てを話した場所だ。
何の因果か、オレが京子ちゃんに大事なことを話す時はいつもここだ。
未来の時と同じように、オレたちは夕日の赤色を目の片隅に反射させて斜面に座った。
「ここ、覚えてる?」
「この河原?」
「うん。」
オレはそれを京子ちゃんに話した。
「未来に居た時、オレが京子ちゃんに事情を全部話した場所なんだ。」
「あ…本当だ。」
京子ちゃんは辺りをキョロキョロと見回しているけど、オレは一切顔を動かさずに前を見ていた。
「もう一つ、大事な話があるんだ。」
「なに?」
ゴクリ と渇いた喉に生唾が張り付く。
夕日と同じくらい顔が赤い様な気分になる。
オレの目を見る京子ちゃんの目も、少しずつ真剣になっていく。

「オレ…京子ちゃんが好きだ。」

丈の短い草が、オレの気持ちを後押しするように揺れた。
京子ちゃんの目がきらきら光って、見開かれる。
オレは表情を変えなかった。
ただ、風に任せて髪をなびかせた。
「本当?」
混乱したように、京子ちゃんは目を逸らした。
「うん、本当。」
でもオレは京子ちゃんの顔を見続けた。
「え…どうしよう…。何て言えばいいかな?」
慌てたようにほっぺに手を当てた。
「何でも良いよ。」
驚いた顔で京子ちゃんはオレの方を見た。
「京子ちゃんの、本当の気持ちを聞かせてくれれば…。」
倒置法で言いたい事を強調した。
オレは不安にならないように、どんな答えでも受け止められるように、笑った。
「私、は…」
目を伏せた京子ちゃんは、少しずつ口を開き始めた。
「ツナ君は、大変なことがあっても私達の事も心配して守ってくれて…すごく、かっこいいと思う。」
どう相槌を打っていいか分からず、黙ったまま次の言葉を待った。
「それに…一生懸命な時も、みんなで笑ってる時も…。」
春の優しい風が、オレの代わりに相槌を打ってくれる。
「それで、私は…」
ついに答えが出るのだと思い、オレの心臓は無意識に高鳴った。
「私は…ツナ君が、好きです。」
オレはそこで初めて表情を変えた気がする。
「え、本当…?」
京子ちゃんはオレの言葉を聞いて、小さな笑みを零した。
「ふふ…、私の反応と一緒。」
「あれ、そうだっけ…。」
恥ずかしさを紛らわすためか、無意識に後頭部に手を当てた。
そしてやっとオレの顔にも、嬉しさの笑みが戻ってきた。
「ありがとう、京子ちゃん。」
うん と京子ちゃんは満面の笑みを浮かべた。
やっぱり、オレは京子ちゃんの笑った顔が大好きだ。
「よろしくね、ツナ君。」
そういって京子ちゃんは右手を差し出してきた。
「え、あ…。こ、こちらこそ…!」
オレは慌てて汗ばんだ手をズボンで拭き、右手で京子ちゃんと握手した。
京子ちゃんの手の平は温かくて柔らかくて気持ちよかった。
「帰ろっか。」
「そうだぞ、ウザ牛に飴も買うんだからな。」
「そういえばそうだった…。よく覚えて…ってリボーン?!!!」
一体いつからどこから来たのか、オレの隣にちょこんとリボーンが座っていた。
「ダメツナにしては、今日一日頑張ってたじゃねーか。」
「うるさいな!雰囲気壊すなよっ!」
リボーンが来たせい(おかげ?)で、ようやく緊張の糸が切れた。
「ふふふ…。」
隣で、京子ちゃんが笑っていた。
京子ちゃんの隣で笑えることが嬉しくて、オレも笑った。
これからも、ずっと京子ちゃんの隣で笑っていたい。
心から、そう思った。


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