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長編
葛湯がくれた感情と、自分が妄想する拒絶
ケータイの目覚ましが鳴り、オレはゆっくりと目を開けた。
布団の中にオレの体温がこもっていて、それが心地よくて再び眠りに落ちそうになった。
でも、鼻先が少し冷たいことに気づいて、オレは脳みそを覚醒させた。
(さむい・・・腹減った・・・ねむい)
今日は何曜日だっけ。そうだ、木曜日・・・。
だからまだ学校がある。
オレはゆっくりと冷たいフローリングに足を下ろす。
そこにぬくもりの欠片も無くて、でもそんなのいつも通りで、特に何というわけではなかった。
スリッパかなんか要るかな?とか頭の片隅で考えていた。
オレは制服に着替えて、ブレザーの下にセーターを着た。
そして7時30分頃に家を出て、まずコンビニに向かう。
コンビニでは、決して温かい料理と呼べるものは買えない。
買えても、温かいお汁粉やコーヒーくらいだ。
それらとパンを購入して、十代目のお宅へ向かう。
歩いてる間に朝食を食べ終えて、胃袋は満足したけれども、外気に指先をさらしたせいで、赤くなっていた。
でもそんなのも気にしない。
いつもどおりだから。
スタスタと通りを歩いていると、横から軽やかな足音が聞こえた。
この足音は、よく知っている。
「ごくでらっ、おはよ。」
「・・・ぉぅ。」
いつも、くっついてくるけどその後に特別何かあるわけではない。
いつもなら。
「あ、そうだ。はい、獄寺。」
そう言うと山本はオレの前に少し小さめの水筒を差し出してきた。
「・・・なんだこりゃ。」
「葛湯だよ。」
「・・・は?」
「いや、昨日獄寺がおいしそうに飲んでたからさ、これ飲めば温まるかなって。」
確かに飲めば温まりはするけど、飲み終わるまでに冷えるという考えはなかったのだろうか。
そこらへんが詰めが甘いというか馬鹿というか。
コイツらしいっちゃコイツらしいけど・・・。
「はい。あ、でもちょっと生姜入ってるから昨日と少し風味は違うかも。」
そう言って山本はオレの手に水筒を押しつけてきた。
「あ、さ・・・さんきゅ・・・」
「いいよいいよ。」
けれどそのまま鞄にしまうのもなんだか忍びなくて、そのまま手に持っていた。
少し経つと、十代目のお宅が見えた。
「行ってきます!あ、獄寺くんと山本。おはよう。」
「おはようございます、十代目!」
「おはようなのな!」
特別誰かが促すわけでもなく、オレらの足は自然と動き、学校へと向かった。

「ねぇ獄寺くん。さっきから気になってるんだけど・・・」
「はい、何でしょう?」
「その、大事そうに持ってる水筒ってどうしたの?」
十代目がそう仰って、オレが山本からもらった水筒を指差す。
「え、っと・・・これは・・・。」
山本からもらいました。
とは、何故か言えなくて、言葉を詰まらせながら、何も言えずにいた。
「オレがあげたんだよ。いつも寒そうだからさ、葛湯作ってきたんだ。」
「へぇ〜。そうなんだぁ。」
結局、真実を告げたのは山本で、オレは本当に何も言えなかった。
何も隠す必要なんて無いのに。
そんな申し訳なさと、恥ずかしさでオレは今度こそ濁す言葉すらも見つからなかった。
山本はそんなオレを尻目に、今度ツナにも作ってこようか?などと話をしている。
二人の会話を耳に通しながら、ぼーっと山本から貰った水筒を見つめる。


そのまま誰のどんな話も脳味噌を素通りし、なにも覚えてはいない。
オレの意識はカバンにしまわれた、温かい葛湯。
寒いけど、何故か山本の目の前で飲むのは恥ずかしいというか忍びなくて、昼までの間ずっとカバンの奥底に眠っていた。
昼休みになり、水筒を持って十代目と別の教室に行ったものの、それを開ける勇気が無くて、オレの為に、というのがすごく申し訳なくて、開けられなかった。
開けようとするたびに脳裏に浮かぶのは、山本と親父さんの優しい笑い声。
それがオレの冷たい心を解きほぐすように、鮮やかに蘇る。
「獄寺くん?それ飲まないの?」
「え、あ・・・。」
と、オレは朝同様に言葉に詰まった。
本音を言うのは、何だか弱音を吐くみたいでできなくて、でも何と言っていいのかも瞬時に思いつかない。
「・・・の、みますよ?」
十代目にオレに一歩を踏み出す勇気をもらったように、オレは水筒の蓋に手を掛ける。
キュッとゴムの軋む音が鳴り、水筒が開く。
直後に、ふわりと生姜の香りが漂う。
そういえば少し生姜を入れたとか言ってたな。
「うわぁ、良い匂いだね。」
ゴクリ、と意味も無い緊張感がオレを襲い、固唾を飲む。
まだ少し湯気が残る水筒の淵に口をつける。
トロリとしたぬるい液体がオレの口の中に入り、昨日とは違う生姜の風味が鼻を抜ける。
おいしい、と素直に思った。
そして昨日よりは弱いけど、喉から胃までの通路が全て温められる感覚があった。
何口も飲んでいる内に徐々に身体の芯が温まるのを感じる。
このまま一気飲みしてしまおうかとも思ったが、何だかもったいないので止めた。
口の中にはまだ甘ったるさが残るけど、それ以上に優しい暖かさが全身を包む。
「オレも飲んでみていい?」
「あ、はい。どうぞ。」
オレは自分が口を付けた方を手前にして十代目に渡した。

バチッ

「わぁ?!」
オレと十代目の指先の間で静電気が起こった。
「びっくりした〜・・・。」
「す、スイマセン!十代目。」
「いや、獄寺くんのせいじゃないから。」
十代目は苦笑いをしてそう仰った。
静電気なんて、久しく起きていなかったのに。
いや、最後に静電気が起きてからやたら時間が長く感じただけかもしれない。
十代目はちょっと静電気を恐れるようにオレから水筒を受け取り、何の迷いも無く水筒に口を付ける。
ゴクリと十代目の喉が鳴る。
その余韻に浸るように十代目は暫く動きを止めた。
「すごい美味しいね。山本に作り方教えてもらおうかな?」
ありがとう、といいながら十代目はオレに水筒を渡した。
オレは水筒の真っ暗な中身をじっと見つめた。
きっと残りは半分を切っているだろう。
生姜の香りも薄くなり、湯気は完全に姿を消した。
そして昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
オレは残りを一気に飲み干し、キュッと水筒のふたを閉める。
行きましょうか、と十代目を促してオレは教室へと向かった。


水筒が空になっても、オレの意識はずっと水筒にあって、依然としてぼーっとしていた。
授業で何をしたかなんて記憶にない。
もちろん、ノートなんて取る気すら無い。
ちらっと山本の姿が見えたけど、特に何も思わずに視線を逸らした。
放課後のチャイムが鳴るまで、ずっとこんな調子だった。
「ごーくーでーらっ!」
山本の明るい声で、意識が戻された。
いつの間にか山本はオレの前の席に座って、オレの方を見ていた。
「・・・なんだよ。」
「いや、ずっとぼーっとしてたから、大丈夫かな?って思ってさ。」
そんないらない心配ばっかしやがって、と心の中で悪態ついた。
オレはパッと教室の時計を見た。
時刻は午後4時。
・・・4時?
「お前部活じゃねぇのかよ?」
と柄にもなく山本の心配なんてしてしまった。
半分無意識に言ったので、オレはすごく恥ずかしくなった。
「え、いや、だって雨だし。」
オレはウソだろ、と思い、バッと窓から外を見る。
でも、雨なんて降ってなかった。
その直後、山本が大爆笑した。
「あはははっ!!獄寺だまされたーっ!」
「うっせーっ!半分寝ぼけてたんだよ!バーカ!!」
二人の会話が、教室に響く。
はぁ、と二人は笑いを冷ますように息を吐いた。
「帰ろ?」
山本はガタッと椅子をしまい、立ち上がった。
オレはそれにつられるようにカバンを持って立ち上がり、椅子をしまおうとした。

バチッ

「ってぇ・・・」
オレは静電気が走った左手を咄嗟に握った。
「今すげぇ音したな・・・大丈夫か?」
そう言って山本はオレの手に触れた。
さっきの静電気で溜まっていた電気が放出されたのか、今度は静電気が来なかった。
「・・・よかったぁ静電気こなくて。」
山本も実は不安だったらしい。
安堵したのか、山本はオレの手をぎゅっと包み込んだ。
じわりと手の甲から伝わる山本の温度が優しく広がった。
「やっぱりまだ手は冷たいのな。」
その温度が温かくて、安心していた。
けど、手を握られているという事実を認識して拒もうとしたけど、山本の表情が何やらしんみりしていたので拒む気が失せてしまった。
しばらくして山本が満足したのか、勝手に手を放した。
「もう帰ろ?」
そう言って山本は歩き出した。
「でも良かったぁ。」
「何が。」
「獄寺に手、振り払われなくて。」
山本は、少し嬉しそうに笑った。
振り払いたかったかと言われると肯定するが、かといって拒否したかったかと言われると肯定できなくなる。
「オレも少しは獄寺に好かれるようになったのかな。」
「自惚れんな、ばーか。」
てめぇなんて嫌いだ、と付け足そうと思ったけど、止めた。
よく考えれば、そこまで嫌いではないのかと思う。
いつの間に、こんな気持ちになってしまったのか、分からない。
そのうち、友達だと思う様になってしまうかと思うと、ちょっと気持ち悪くなった。
山本は山本という存在で、それ以上でもそれ以下でもない。
ある意味、他の奴等とは違う、特別な存在なのかもしれない。
でも十代目は十代目で特別だし、けれども同じ特別でも価値は全く異なる。
かといって他のファミリーを考えてみると、ファミリーという括りになってしまう。
だからオレの中で山本は確実にランクアップしているのか、と改めて気付いた。
いつしか、腹を割って全部話せるような、そんなところまで関わってしまうのか、と思った。
それと同時に、そこまでコイツを引きずり込みたくないという感情が芽生えた。
優しくしてくれたからこそ、オレを受け入れてくれるからこそ、そんな奴を死なせたくない。
でも十代目に同じ思いがあるかというと、違う。
ボンゴレの十代目として継いでもらいたいと思うし、本拠地を構えてボスとしてマフィア会に君臨してほしいとまで思う。
けど、山本は違う。
ボンゴレ十代目の守護者なんてしてほしくないし、マフィアなんていう闇に足を踏み入れてほしくない。
でも、他のファミリーの奴らはどうかと言われると、どうでもいい、という答えしか出てこない。
色々な視点から考えても、オレの中でやっぱり山本は特別なんだと感じる。

なんて考えてるうちに、分かれ道に差し掛かった。
「あっ、獄寺。水筒。」
「あぁ。・・・でも、洗ってないけど・・・。」
「いいよ別に。どうせこれしか水筒無いから明日持ってこれなくなるし。」
「そうか。」
オレはそこで一旦言葉を止めた。
「・・・やまもと。」
「ん?」
「悪いな。」
「いいよ?オレが好きでやってることなんだしさ。」
そんなもんか?とオレは疑問に思ったけど、山本がそう言うんだから、とオレはカバンから水筒を取り出して、山本に渡そうとした。
でも、さっき教室で起こった静電気を思い出して、一瞬手が止まった。
「獄寺?・・・あぁ、静電気か?」
「・・・。」
オレはなるべく山本の手に触れないように水筒を渡した。
そしてゆっくり水筒から手を放した。
まるで何かを惜しむように。
「じゃあなっ。明日も作ってくるから。」
「・・・じゃあ。」
オレは山本の言葉に短く返事をして、山本が小走りで帰る様子をじっと見ていた。
途端に、辺りが寂しくなった。
帰ろ。
近くのコンビニで晩飯を買って。
でも・・・どうしてだろう。
胸の奥に、鈍い痛みが圧し掛かる。
のんびり歩いている内に、さっきの思考を反芻している内に、あ、と気付いた。

(オレは、山本のことが・・・好きなのか。)

そう理解したはいいものの、今度は逆に恥ずかしくなってきて、その場に蹲りたくなった。
でもまさか公共の場でそんな恥ずかしいマネなんてできる筈がない。
オレは蹲る代わりに家へとダッシュした。
ほんの、十数メートルなのに。
たった、十数メートルだったけど、オレの息は上がっていて、それが走ったせいだけじゃないことを何処かで理解していた。
そうか、そうだったんだ。
けど自分の結論を間違ってるなんて思ってなくて、でも間違っててほしいと願ってて、矛盾した想いがグルグルと思考を支配する。
手先は冷たいのに、顔が熱いことを認識した。
熱を均衡にするために、頬に手を持っていった。
自分の頬は思った以上に熱くて、逆に心地良い気がした。
家に入り、冷静に感情を整理していっても、やっぱり同じ答えにたどり着く。
オレは一体何を思っているんだ。
男同士で、気持ち悪いだろ。
そんなの分かってる。
でもしょうがないじゃないか。
好きだと認識してしまったんだから。
足元が冷たくなっていくのも厭わずに、しばらく玄関でそんなことを考えていた。
だんだんそれが馬鹿馬鹿しく感じてきて、中断した。
立ち上がり、真っ暗な部屋の電気を点ける。
そして古い暖房の電源を点ける。
弁当をテーブルに放って、冷たいベッドに倒れ込んだ。
けどぐぅ、と腹が鳴ったから、弁当を電子レンジで温めて食べた。
しーんとした部屋の中で自分の咀嚼音だけが響く。
いつもなら何でもないことなんだけど、今日だけは特別に感覚が鋭くなったような感じになった。
だから、なんか気持ち悪くてテレビを点けた。
テレビの中の話題になんて興味はなかったけど、自分の咀嚼音さえ掻き消してくれればそれでよかった。
少し経って、弁当を食べ終わったから用も無いテレビを消した。
そうしたら今度は暖房の働いている音がやけに大きく感じた。
オレはどうしたらいいか分からず、部屋の真ん中で突っ立っていた。
とっくに冷えてる手は力なくぶらぶらと空中で揺れ、行き先を失った目線は目的地を求めて部屋を彷徨う。
妙に鋭くなった聴覚が辺りの音を無差別に拾い、脳に無駄な情報を与える。
自分のこの行動の意味なんて全く無くて、きっとあの感情を忘れるための防衛策なのではいかと思う。
さっきまで力が込められなかった冷たい手が、昨日山本に掴まれた肩に置かれる。
そこに熱が帯びてきたのは、きっと気のせい。
まして熱が出たように顔が熱いのも、気のせい。
無音の部屋に、こだまする無駄な音。
だけど統一された、純粋な感情。
静まった部屋が寂しくて、感情だけがその存在感を存分にアピールしてくる。
山本が好きだという、持ってはいけない感情。
そこまで理解しているのに、どうしても捨てられなくて。
笑顔を思い出すたびに、湧き上がる熱を止められなくて。
このままこうしていれば、寒がりが治まるんじゃないかという冗談が頭をよぎる。
けど直後に思う。ふざけるな、と。
オレが他人にそんな感情を抱いて良い筈がない。
誰かに優しくしてもらう資格なんて無い。
そうだ・・・そうだよ。
オレは、何も持ってない。
料理も、優しさも、温もりも、強さも、何も・・・。
返せるものが無いから、貰っても恩返しができない。
だから、人に世話になるのは好きじゃない。
そんな自分の思考回路が馬鹿馬鹿しくなって、風呂に入ろうとドアノブを捻ろうとした。

バチッ!

「・・・っ!」
オレの指を走る、強い静電気。
今までで一番強いと思った、その位痛かった。
その衝撃で、オレはただドアの前で茫然と立つことしかできなかった。
まるでそのドアが、オレと山本とを遮る、強固な壁のように。
今度は静電気から身を守るために、袖で手全体を覆いながらドアを開けた。
ギィ、と開かれたドアの先に広がる暗闇。
今日だけはなぜか恐怖に感じた。
そんなのは、気のせいだ。
パチン、と壁にある電気のスイッチを押す。
明るくなった部屋の中には、もちろん何も無い。
オレはそのまま風呂に入った。


ピピピ・・・ピピピピ・・・
朝を知らせるアラームが鳴る。
風呂に入って、そのまま布団に入って寝てしまったようだ。
オレはいつも通りに支度をして家を出ようと、ドアノブに手を掛けた。

バチッ

その衝撃に、オレは手を引っ込めた。
静電気が、だんだん周囲からの拒絶に感じてきて、不思議と悲しいという感情が湧いてくる。
オレはそんな感情を懸命に振り切り、勢いよく家から飛び出した。
朝飯を買うのも忘れて、オレは走っていつもの分かれ道へ行った。
着くと、すぐに山本を探すために辺りを見回す。
どの方向を見ても人影すら無く、自分の呼吸だけが耳に入る。
そういえば朝飯を買ってないから時間が違うのか、ということを認識するまでに時間がかかった。
はー・・・、と長いため息をついて近くの電柱に背中を預ける。
パタパタと無意識に服の中に外気を取り込む。
それが暑くてやっている行為だと気付くのにも、時間がかかった。
セーターを脱ごうかと思って、まず上のブレザーを脱ぐ。
直後に冷たい風が吹き抜けて、大きく身震いをし、ブレザーを羽織った。
「なーにやってんの?」
背後から山本の声が聞こえて一瞬本気で驚いたけど、その声にどこか安心して再び長いため息をつく。
「あ、葛湯持って来たぜ。」
別に聞いてもいないのに山本はそんな事を言った。
それがいつも通りで安心したなんて心の奥で思っている。
「はい。」
山本が取り出した水筒を受け取ろうと手を伸ばした。

バチッ!

「うぉっ!静電気!」
と山本が明るさの中に痛みを交えた声で叫んだ。
その瞬間、オレの心の中で何かが崩れた気がした。
昨晩からことある事に走った静電気。
それが周囲からの拒絶に感じた、あの瞬間。
オレの中でその記憶が鮮明にそして力強く蘇る。
山本だけには起きてほしくなかった、拒絶の静電気。
けど静電気なんてただの物理現象で、そんなものに拒絶もくそも無いんだけど、どうしてもそう考えずには居られなかった。
「やっぱ静電気とか慣れねーな。」
「あ・・・ゴ、メン・・・。」
「獄寺?」
オレは水筒を受け取ることも忘れ、自分の手を握って山本から一歩離れた。
「おい、大丈夫か?」
そう伸ばされた手から、またあの静電気が起こる気がして。
静電気がオレを拒絶するように起こるから、それが怖かった。
せっかく好きだと確信したのに、触れるだけで拒絶されるような無駄な感情がグルグルと巡る。
山本だけには、拒絶されたくなかったのに・・・。
「たかが静電気だろ?」
そんなの分かってる・・・!
頭では分かっていても、心がそれを無視して身勝手な被害妄想を繰り広げる。
「どうした・・・?」
「・・・静電気が嫌なら、オレに触るんじゃねーよ。」
「おい!ごく・・・」
山本の声を無視して、オレは走った。
一体何処へ向かっているのかも分からずに。


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