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おはなし達
卵粥とオレとキス
唐突だが、オレは獄寺のことが大好きだ!
・・・って突然言ってるオレも相当馬鹿だな・・・。
いや、もともと馬鹿なんだけど。
だけどやっぱり大好きで愛くるしいんだ。
可愛くてって言ったら怒られるけど、本当はずっとそう思ってる。
でも獄寺はオレのこと嫌いみたいだし、ツナとばっかり遊んで、喋って・・・。
こういうときだけツナが本当に恨めしく思える。
ツナさえいなければ、オレは獄寺と仲良くできるのにな・・・。
でもツナは友達だからそんなこと言えるはずもない。
ただ密かに思っていられればいいのな。

ある日、獄寺が休んだ。
そういう日は幾度もあるけれど、オレはその日は楽しくない。
つまんない。
獄寺が居るからオレの日常は満たされるのであって、獄寺がいなければオレの日常はなにも無くなってしまうのだ。
ツナが連絡をとったみたいで、「風邪だって」とオレに言ってきた。
その瞬間オレは決めた。
部活が終わったらソッコー獄寺の家に行く!
丁度オレの家と通学路の中間地点に在るため、行きやすいのだ。
あっ!でもやっぱり何も食べてなさそうだから、何か持って行こうか。
きっと体温計も無いだろうから持ってってやんなきゃ。
やっぱりオレの取り柄の一つとして料理があるんだから、何か作るべきだ。
そしたら、何を作ろうか?
今から楽しみで楽しみで仕方がなかった。
オレは授業中も、そして部活中にもずっと考えていた。
やっぱり獄寺のことが大好きなオレは、いつも獄寺のことばかり考えるんだ。
でも獄寺にとってこれはうっとおしいものであり、何の得にもならない。
更に言ってしまえば変態だと思われてしまう。
男同士の恋愛なんておかしい、そう思われてるだろう。
オレだって時々そう思ってしまう。
でもやっぱり獄寺のことが大好きだから、その気持ちの方が強いから、どうしても考えてしまうのな・・・。
無事に部活も終わり、オレは急いで家に帰り必要なものを揃える。
ダッシュでコンビニやら部屋やらを往復した。
そして走って獄寺の家に行く。
オレは息を切らしながら獄寺の家のインターホンを押す。

ピンポーン・・・

暫くするととてもゆっくりした重い足音が聞こえた。それが止まるとともに古いドアが音を立て開く。
そこから出てきたのは熱で顔が少し赤くなった獄寺の姿があった。
獄寺のことだ。
どうせ「寝てれば治る」とか言ってなんの処置もしてなかったんだろう。
「よぉ!獄寺!お見舞いに来たぜ♪」
そう言うと獄寺は眉間に皺を寄せ、扉を閉めようとした。
「・・・帰れ。」
「ちょ、待てよ。獄寺。ひでぇなぁ!」
「オレは忙しいんだ。」
そういって必死で扉を閉めようとする獄寺だったが、やはり風邪で力が出ないのか、簡単に振り切れた。
いとも簡単に開いてしまった扉と、ふらつく獄寺を目の前にしたオレはちょっと引いてしまった。
「獄寺風邪引いたって、どうせ寝てただけなんだろ?なんか栄養摂った方がいいって。作るから入れて!」
そう言うと獄寺は何も言わずオレに背を向けた。
その瞬間獄寺の身体がふらつき、慌てて支えた。
その身体はあまりに細くて、軽くて・・・。
オレは自分自身を疑うほどだった。
そのまま気を失った獄寺をベッドまで運び、持参した体温計で体温を測った。

ピピピ・・・

その音が目覚ましとなったか、獄寺が目を開けた。
「何勝手なこと・・・してんだよ。いいから、テメェはささっと・・・帰れ・・・よ」
「ダメ〜。だって獄寺38.8度もあるんだもん。そんな病人放っておけねぇよ。」
目を開けてすぐに言葉を吐いた獄寺にオレはそう言い返す。
すると獄寺は納得したか再び目を閉じた。
急に獄寺の身体が重くなり、静かな寝息を立て始めた。
一瞬その顔を見つめ、可愛いと思ってしまった。
キスとかしてぇなとか思ったけど、そんなことしたら獄寺に怒られるどころの話じゃない。
オレは慌てて首を振り、台所に向かった。
オレは何とか獄寺に料理を食べてもらおうと、栄養があるものを作った。
丁度作り終わったころ、オレは獄寺を起こしに向かった。
寝かしてるのに悪いなとは思ったが、何か食べさせなきゃもっとダメだとも思い、獄寺を起こした。
「獄寺・・・卵粥できたよ。」
獄寺は眠そうに苦しそうに声をあげた。
そしてゆっくりその身体を起こした。
まだやはりふらつくのか、オレに寄りかかってきた。
オレの心臓がドクンと高鳴る。
テーブルの前に座った獄寺の目の前にまだ熱々の卵粥を置いた。
獄寺は丁寧に「いただきます」と言い、ゆっくりと食べ始めた。
「どう?獄寺?」
「・・・意外と・・・いける。」
「だろ?ちゃんと食べて栄養つけろよ。」
黙々と獄寺はオレの作った卵粥を食べ続け、10分が経たないうちに食べ終わった。
その後も獄寺は丁寧に「ごちそうさま」と言った。
オレは笑顔で獄寺の方を向く。
「あっ!そうだ獄寺。オレ風邪薬持ってきたのな。飲む?」
そういうと獄寺はコクリと頷いた。
オレは食器を下げ、コップに水を入れそれと薬箱から引っ張り出してきた風邪薬の箱を持ってきた。
「獄寺は、14歳だから2個!」
「バカ。それをいうなら2錠だろ。」
「あっそうか。」
大分楽になったのか、会話も徐々に増え始めた。
獄寺はその薬を飲むと再びベッドに入った。
そしてまた暫くすると規則正しい寝息が聞こえてきた。
その顔を見てオレは可愛いななんて思ってしまった。こんなこと言ったら無論帰されてしまうので、心の中で叫んだ。
そうだよな・・・。そういえば獄寺は今まで風邪を引いても看病してくれる人、居なかったんだ。
でもこれからはオレが獄寺のこと看病する!!
決めた!!
片づけをしながらもずっと考えてた。
獄寺のこと。
なんでいつもオレを嫌いって言うのかな?
ツナばっかりじゃなくてオレにも笑顔・・・見せてほしいのな・・・。
可愛くて、愛しい獄寺。
って言ったら本当に怒られそう。
だけど・・・いつか言いたいな。
オレが獄寺のこと大好きだって・・・。
片づけが終わったオレは、時計を見る。
すでに8時を回っていて、帰る時間になってしまった。
そして別れを惜しむようにゆっくりと獄寺が寝てる横に座る。
安らかに眠っているようで安心した反面、この寝顔をいつまでも見ていたいとも思った。
だけどそれは叶わないから、1つだけ・・・
「獄寺・・・大好きだよ。」
オレはそう言った。
聞こえないように、起こさないように・・・。
そして獄寺の額に1つキスを落とした。
―――――また・・・明日な。




大好きな獄寺のために一生懸命な山本。
健気な山本が大好きです。
最後のキスには、獄寺もきっと気づいてるよ。

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