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おはなし達
おかえり。
オレらはマフィアであるボンゴレファミリーのリングの守護者であり、常に危険と死と隣合わせの生活を過ごしている。
常に気を配らねばいつ死んでもおかしくない。
それが例え何歳でも。
オレと山本はそんな危険な日々を2人で楽しく過ごしている。
もちろん周りに気は配っている。
互いが互いを思い、助け合っている。
マフィアに助け合いなど無いのだが、オレと山本は付き合ってるという身だ。
互いを助けず誰を助ける。
こんな日が何年も続くと思ってた。
だが、その日は突然来てしまった・・・。

ある日、オレたちは敵のマフィアと争っていた。
オレと山本は結構離れたポジションに立っていた。
なので互いの状況が分らなかった。
まず、死ぬことはないと思ってた。

そして予想通り、オレたちはその争いに勝った。
オレは一刻も早く山本の状態が知りたかった。
アジトに帰り、十代目に訊いた。
すると意外な答えが返ってきた。
「山本は・・・。ここでは治療できないほどの大怪我を負って、今中央病院で入院してるよ。敵から集中攻撃を受けて・・・。今も意識不明の重体なんだ。」
オレは驚きを隠せなかった。
あの山本が・・・入院?集中攻撃って銃で?状況が分らなかったオレは混乱した。
しかも意識不明の重体だなんて・・・。
オレはすぐにでも山本の元へ行きたかった。
でも立場がそうはさせてくれなかった。
マフィアである以上、無闇に外を出歩けない。
出歩けば敵の思うつぼ。
出るところを見られればアジトを攻撃され、歩いてるところを発見されれば敵からの集中攻撃。
オレはどうなっても構わないが、アジトが他の奴らが傷つくリスクを考えるとそうできなかった。
電話だって、敵にキャッチされる可能性がある。番号が知れればアジトの場所も特定され、それまた攻撃される。アジトにはアホ牛や、イーピン、フゥ太といったガキも多いし、三浦ハルや笹川といったマフィアに無関係な者だっている。
そんな奴らを傷つけるわけにはいかない。
十代目もきっと不安ではあるけど、彼らを傷つけることを決して望まない。
オレは逢えない日々をただ耐えるしかなかった。
山本が生き続けてくれることを、きっと帰ってくれることを信じて。

オレは今まで一度も山本に好きだと言ったことがない。
伝えれば、山本も安心できたか?
安心して入院できたか?
オレはそんなことを毎日思っていた。
オレは山本に何もすることができない。
いくらオレでも、もどかしくて、つらくて涙が出る日もある。
オレは心配だった。
山本は死ぬんじゃないか、もう2度と逢えないんじゃないかと。
でもオレは信じた。
山本が生きていることを、いつかまた会えることを、いつかまたいつもみたいに笑いあえる幸せな日々が戻ってくることを・・・。
だから山本、早く・・・戻って来いよ。
ずっと、待ってるからな。

オレはずっと願っていた。
逢えない日が、年月が1年過ぎた。
オレはもう、オレも山本も16歳になった。
その間もオレは何度も何度も外に出ようとした。
でもできなかった。
こんなファミリーがつぶれれば、オレは自由に山本の元へ行けるとまで考えてしまったときもあった。
でもオレは耐えた。1年間ずっと耐えてきた。
そしてオレは十代目に呼ばれ、少し話をした。
山本の話だった。1年経ってもファミリーを気遣うなんて、なんて優しいお方だ。
でもオレの気持ちとは裏腹に話の内容は残酷なものだった。
「山本は・・・今夜が山場だって。もし今夜を乗り越えなければ山本は・・・もう2度とオレらの元に戻ってくることは無いってさっき訊いたんんだ・・・。それを獄寺君に伝えたくて・・・。」
オレはその話を聞いた時、奈落の底にでも突き落とされた気分だった。
今夜、今夜が大勝負なんだ・・・。と。
そう、この1年間山本は1度も目を覚まさなかったという・・・。
1年間眠り続け、今日この日がオレたちの、山本の運命を左右する。
オレは今までよりも強く、強く願った。
山本が無事に生きてるように、また1年前のあの日が帰って来るように・・・。
たとえ今奈落の底にいても、何年後かにはそこに陽が差し込み、明るい場所になっていることを信じて・

オレらの運命を左右した日から早2年、オレたちはもう18歳だ。
もう、と言ってもまだ未成年なんだけど。
そして、この地域をボンゴレが圧倒的な力で治めたからか、大分落ち着いた生活となった。
大きな争いもなく、平和だった。
オレはそんな日々の中にいても山本を忘れたことはなかった。
無事を祈らない日は無かった。
それは、1年前とも3年前とも変わらない。
オレは神を信じない主義だけどでも今は、信じるしかなかった。
神様、山本を無事にオレの元へ・・・

「獄寺」

今・・・聞きなれた声がした。
女ではなかった。
じゃあ十代目?違う。

アホ牛?違う。

芝生頭?違う。

雲雀?違う。

骸?違う。

フゥ太?違う。
みんな違った・・・。
じゃあ残りは・・・

「獄寺!」

「やま・・・もと?」
オレは振り返って驚いた。
そこには山本の姿があった。
ずっと信じ続けた、山本の姿が・・・。
「獄寺!ただいま!」
おれは不覚にも泣いてしまった。
ずっと願ってた。この日を。
山本が再びオレの目の前に立っている日を、再び山本がオレの名前を呼んでくれることを・・・。
ベタな映画にあるような感動的な再会になるかと思った。
が、オレは気持ちと裏腹に山本を殴った。
「山本のバカヤロー!!何年待たせてんだ!」
「ご、ゴメン獄寺。」
オレは泣きながら言った。
何年も待ち続け、最初にでた言葉が「バカ」?
違うだろオレ。
他にも言うことがあるだろうがよ!バカ!オレのバカ!
「何で2年も待たせてんだ!」
「だって帰ってきてすぐにでも獄寺とまた普通に歩いたり戦ったりチューしたりしたかったんだもん。しかも包帯グルグルの無様な姿見せらんねぇし。」
俺だってずっと待ってた。
どんな姿でもいい。山本に逢いたかった。
山本の隣を歩きたかったし背中を預けて戦いたかったキスだってしたかった。
でも我慢してきた。ずっと。3年間。
オレは3年も経ってるのに、1度も諦めたことは無かった。
言いたいこともずっと言えずに耐えてきた。なのに・・・なのに・・・!
オレはまた泣いてしまった。山本も心配そうにオレを見つめる。
「山本・・・。ごめんな。こんなことばかり言って・・・。でもオレは山本がずっと好きだから。1日も忘れたことなかったぜ?だから・・・だから・・・。」
オレは言いたいことを1つ言った。
今まで言ったことのなかった「好き」の2文字。
でもまだ今一番伝えたいことが残っている。それは・・・
「獄寺・・・。オレ、獄寺に聞いてないことがあるんだ。今、聞きたい!」
山本ももしかしたらオレの気持ちを分かっていて、言ってるのかもしれない。
オレは心から山本と繋がってる気がして恥ずかしかった。
「ただいま!獄寺!」
「・・・おかえり・・・。」
山本は3年前と変わらない、けれど少し大人びた笑みを浮かべた。
そう、3年月が経ったって山本は変わっちゃいない。
オレも変わってない。年月なんて関係ない。
オレはもっと言いたいよ、山本。
山本、おかえり。
ずっと、ずっと待ってたよ・・・。




なんとなく感動系のものが書きたかったんです。
原作をちょっとだけアレンジしました。
ちなみに、原作では獄寺君は10年待ってました。
それはさすがに長すぎだろ、と3年間にしました。

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