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おはなし達
一年後のクリスマス〜大切な約束〜
オレが初めて並盛に来た年のクリスマス。
十代目と笹川が2人で出かけた。
そのときオレは特に理由も無く山本と過ごしていた。
そして帰り際、2人である約束をした。
 
「また来年も来ような。」

そして次の年、その約束通りにまた2人でクリスマスを過ごした。
別に特別何かをした訳でもなく、ただ2人でクリスマスを楽しんだだけだった。
そしてその年も約束した。

「また来年も来ような。」

その時オレらは来年も、再来年も、10年後もずっと一緒にクリスマスを過ごすのだろうと思ってた・・・。
そして今年。
12月のはじめにオレと山本はクリスマスに向けて着々と計画を進めていった。
もちろん十代目は毎年のこと、笹川と一緒に過ごすそうだ。
オレはそれでもよかった。
十代目が幸せなら・・・。
そしてもういつ初雪が降ってもおかしくないクリスマスの1週間前。
オレと山本は2人で集まりクリスマスに向けて最終的な計画を作っていた。
例年よりも緻密にやっていた。
オレたちももう忙しい時期なのによく呑気にやってられるなとも思ったが、毎年していた約束を破るわけにもいかないので集まった。
「なぁ獄寺。オレさ、好きなやつがいるんだけど・・・。相談に乗ってくれる?」
「なんだ?」
オレは山本から珍しく相談を受けた。
しかも恋愛相談だなんて人生でも初めてのことだ。
クリスマスが近いせいで妙に上機嫌だったオレは、山本の相談に乗ってやった。
「オレ、2年前からずっと好きな子がいて、いつも明日告白しよう。明日、明日ってなっていつも言えなかったんだ・・・。なぁどうすればいいと思う?」
「それってただの根性無しじゃね?」
「ひっでぇ。こっちは真面目なのに。」
「・・・そうだな。何か特別な日・・・たとえば祭りとか誕生日とか、クリスマスとか・・・に思い切って言ってみるとか。年に数回だけ勇気を出せばいいだけだし。そんな毎日覚悟決めてたんじゃあ言えないわな。」
オレは自分の知識をフルに働かせアドバイスをした。
山本もなるほどという目でオレを見る。
オレも我ながらいいアドバイスができたと思う。
「じゃあもうすぐだし、クリスマスに・・・言おうかな♪」
オレは今、どんな攻撃や悪口よりも傷ついた一言を聞いた気がした。
クリスマスは・・・昨年のオレたちの約束は?一体どうなるんだよ!?
「・・・そ、っか。じゃあオレ帰るわ。」
オレはその場に居られなくなり、走ってその場を去った。
悲しくて仕方がなかった。
ずっと山本のことが好きだったから。
だから・・・毎年ずっと一緒にいたんだ。
今年も一緒に居たかった。
これからも、ずっと一緒に居たかった・・・。
でもそれが今年叶わぬものとなった。
山本は、オレより他の奴を選んだ。
当たり前と言えば当たり前のことなのかもしれないけど、それがショックで仕方がなかった。
オレは次の日から学校を休んだ。
その間ずっと考えてた。
昨年も、一昨年もずっと一緒にいたクリスマス。
それを誰かも知らない人にとられてしまう。
1カ月以上前から今まで以上に緻密な計画を立てた。
今年は今までで一番の思い出にしよう・・・と。
2人で誓った約束も今ではただの会話となった。
山本にとってオレは山本の好きなやつ以下の存在だ。
オレはどうしようもなく寂しい気持ちになった。

オレが山本を好きになったのは昨年の夏だった。
オレは昨年夏風邪をこじらせ大変だった。
そんな時、一番に駆けつけてくれたのが山本だった。
今思えば、友達が風邪をひいて心配しない奴はいない。
オレはそれからずっと山本の優しさの虜になってしまった。
好きという感情も知り、オレは幸せで一杯だった。のに・・・。

山本、オレと山本の約束はそんなものだったのか・・・?

次の日山本から『どうした?』というメールが来た。
お前のせいだろ!?なのに山本ときたら・・・なんて鈍感な奴だ。
オレは『バーカ』とメールを返した。
それからクリスマスの前日まで山本と会うことは無かった。
オレは一瞬明日のことでメールしようとした。
でも無理だった。できなかった。手が動かなかったのだ。
昨年まではこの時が一番楽しかったかもしれない。
でもその楽しみも、全て奪われた。
今のオレには何も残っちゃいない。
来年も、再来年もずっと一緒に居たかった。
あの時相談に乗らなければ・・・。
オレは後悔で一杯だった。悲しくて、悔しくて涙があふれそうになった。
次の日、1カ月前に決めた朝の9時。
毎年変わらぬ待ち合わせ場所に行った。
オレは覚悟を決めた。
今日、山本が来なければオレはこの恋を諦める・・・と。
そう山本にメールをしようとした。
でも途中まで打って手が止まった。
もし今、山本が好きな人と居たら・・・このメールは迷惑だ。
オレはそのメールを削除した。
1時間、2時間、5時間とあっという間に時が過ぎる。
その間も考えてたのは山本のことだけだった。
逢いたい、逢いたい、逢いたい・・・。
そう考えるばかりで逢えはしなかった。
このままではオレは一生山本のことを諦められないだろう。
そこでオレは山本が来るまで待ってることにした。
たとえ何日でも何ヶ月でも。
山本が来るまでオレは待ち続けると決めた。
待ち合わせの時間から14時間が立ち、時計は夜の11時を指していた。
腹なんて減らなかった。
その場所に居ることにも飽きなかった。
オレはそれでも山本を待ち続けた。
すると初雪が降り始めた。まるで今日オレが山本にフられたことを祝福するような・・・。
『もうすぐ・・・“今日”が終わるな・・・。』
オレは半分諦めた。
でも待ち続けた。
つらくて今まで堪えてた涙がこぼれた。
オレはその涙を隠すために下を向いた。
―――――山本ぉ・・・!
「・・・でら・・・くでら・・・獄寺・・・獄寺!!」
聞きなれた温かい声が聞こえた。
空耳かとも思ったが、オレは確認するために涙をふき前を向いた。
そこには山本の姿があった。
オレはなんだか嬉しかった。
遅れても、山本が他の誰かを好きであっても、今ここに山本が来てくれたことには変わりなかった。
でも時計は11時40分を指した。約束の時間より14時間40分の遅れだ。
オレらは暫く黙っていた。
「・・・何で今日来なかったんだよ。」
「ごめん・・・。」
「ごめんじゃねぇ。何でかって聞いてるんだよ!」
オレは鼻声で叫ぶ。
山本はそれを察したのか、悲しい顔でオレを見る。
「獄寺だって・・・何でこんな時間までオレなんかのこと待ってたんだよ。オレのこと・・・嫌いじゃなかったのか?」
オレはそのあと、何も言い返せなかった。
嫌い・・・そうだ。オレはアイツのことが嫌いだったんだ。
山本の顔を見ると、山本は何かに気付いたようだった。
そしてオレの手を握った。
「獄寺・・・。ごめんな。こんなに手が冷たくなるまで・・・待たせちゃって。オレ・・・。」
時計はもう11時55分を回った。
オレは指先から伝わる山本の温もりが心地よくて、再び涙が零れ落ちた。
またオレには止められなかった。
「獄寺。ごめんな。オレは獄寺のことが好きなんだ。お前はオレのこと嫌いかもしれないけど。お前が来たときからずっと・・・。」
オレは、泣いてるにも関わらず山本を見上げる。
何せ驚きすぎて泣いてることすら忘れさせられた。
オレが並盛に来て、山本がオレを好きになったのもきっと同じ頃。
オレも山本が大好きだ。
でもなかなか言い出せなかった。
そのことが悔しくて、また涙がこみ上げてくる。
「獄寺、ごめんな。オレが泣かせちゃったのな・・・。いいよ、何も言わなくて。」
理由も無くしょげてる山本を見て、オレはブンブンと首を振った。
涙が飛び散るくらいの勢いで。
オレは覚悟を決めた。
山本はオレを好きで居てくれた。
オレが好きになる前から・・・。
だから、時間では負けてたとしても気持ちでは負けない・・・!
「オレは山本が大好きだ。嫌いなんかじゃない・・・。だからそんなこと言うなよ。」
時計は11時58分。
ついに言ってしまった。
でも後悔は無かった。
山本もオレをずっと好きだと言ってくれたから・・・。
その直後、山本の手がオレの冷たい頬に触れた。
「獄寺。キス・・・。してもいい?」
オレは軽く頷いた。
山本はオレの顔を上げた。
オレは軽く背伸びをした。
唇が触れた瞬間、夜中の12時を知らす鐘が鳴った。
そう。オレたちを祝福するかのような・・・。
鐘が鳴り終わり、オレたちの唇も離れた。
その直後、オレはある疑問を抱いた。
なぜ山本はオレを想っていたのに遅れたんだ?と。
そう訊くと山本はあっ!っといった表情をした。
「そういえばオレ、獄寺に渡すもんあったんだ!」
そう言うと山本はポケットからあるものを取り出した。
それは、小さいけどデコレーションに凝ったケーキだった。
よく見ると山本の手は絆創膏が多く貼ってあった。
山本にしてはよくできてるものだった。
でもオレはなんとなく嬉しかった。オレはそれを受け取った。
オレと山本は元々両想いだったんだ。
そう、オレが想ったときからずっと今まで。
でも山本もオレもずっと黙ってただけなんだ。
オレたちは手を繋いだ。
絆創膏だらけの山本の温かい手と、オレのアクセサリーが沢山ついた冷たい手が繋がった。
「獄寺!大好き!これからも。今日みたいな寂しい思いはさせないよ。これからずっと!」
「分かってるんだよバーカ。」
オレはまたいつものように悪態づいた口に変わった。
それでも山本は笑顔だった。
それはオレの気持ちを確信しているからだろう。
オレも泣いたせいもあり、顔が熱くなった。
今までは絶対になることは無かった。
でも今は変わった。
今迄からのクリスマスの数だけオレの気持ちは募っていった。
そして今年、山本のおかげでもどかしい気持ちから解放され、幸せで一杯だった。
今までで貰ったプレゼントの何よりも嬉しかった。
そして山本はオレを抱きしめた。
オレは山本の温かい背中に手を回した。
今までしたくてもできなかった。
この気持ちを伝えるかのように強く、強く抱きしめた。苦しくたって構うもんか!
「獄寺。来年も、また来ような。」
「あ゛?もううんざりだ。2度と来ねぇ!お前も来んな!」
でもオレはそんなことを言ったって『来年も、再来年もずっと一緒に来たい』と心の底から思っていた。
山本はそれを見通したかのような笑みを見せた。
「うん。来年も再来年も、10年後も来ような♪」
「来ねぇ!って言ってんだろうが!!」
そうだな、山本。来年も再来年も、10年後も20年後もずっと一緒だ。
何十回でも何百回でもお前とクリスマスを過ごしてやる。
オレはそれを約束するよ。だから山本、お前も約束すると誓ってくれ。
そしたらオレは、山本を一生愛すると誓うから。
なんだかクサイ台詞ばかり考えるもんだと思った。
でもそうとしか言いようがない。
オレは、オレらはこれからも毎年、毎年、同じ言葉で終わろう。
「大好きだよ。来年も来ような。」




君たちは最初から両想いだったんだよ。
ということを書きたかった。
よく考えたら、普通14時間もも待たないですよね。


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