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おはなし達
好きと嫌いと涙と気持ち
「獄寺っ!大好きだ!」
「・・・は?」
いきなりの告白にオレは驚いた。
しかもその相手が男だなんて・・・。
第一オレは告白されたこともないし、恋などという感情も知らない。
男相手なんて考えたこともなかった。
「お前、フザけてんのか?」
「ひでぇ獄寺。オレ真面目だぜ?」
「あっそ。」
「・・・で獄寺、へ、返事は?」
「あ゛?却下だよ!」
オレはすぐに屋上を出て教室に戻った。
なんとなく気分が悪かった。
山本が追いかけてくる気配もなく、少し安心した。

授業も終わり、オレは家に戻った。
部活がある山本と一緒に帰らなくていいと思うと清々する。
清々する・・・。でもなんか心の中に異物があるかのように変な感じがする。
よくわからないから、放っておこう。
それしか解決方法を知らないから。

しかしなぜオレなんだろうか・・・。
あいつは認めるのは正直悔しいがモテる。(かといってそれに嫉妬しているわけでは断じてない)
周りに女なんて山ほど居るはずだ。
にも関わらず、なぜ・・・・?
オレは好きなやつだとか恋愛に関われるような人間はいない。
むしろ興味がない。
だから山本とも付き合う気も無ぇし、そういった感情を持つ気にもなれない。
―――――何考えてるんだオレは・・・
ふと我に返り、そんなことばかり考えているのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
それに考えるのも面倒になり始めた。
時計を見ると、もう夜の10時を回っていた。
オレは遅い夕食をとり、眠りについた。

次の日もオレは学校へ行った。
いつもの景色、いつもの態度、いつものメシ・・・のはずだった。
だが、何かが違った。
山本の態度が変わったわけでもないし、オレの態度も変わっていないと思う。
いや、違う。
心の中に、昨日のモヤモヤとした感情があるからだ。
だから、なんだか昨日と違う気がするんだ。
オレは授業の間もこのモヤモヤを解決すべく、珍しく授業を真面目に受けてみた。
だが、次の休み時間に山本の顔を見る度モヤモヤが溢れ出てくる。
授業をサボって眠っても、効果はない。
オレの心からこのモヤモヤは一生取れないのではないか、とまで考えた。
なのでオレは次の日から学校を休むことにした。
暫く山本のことを忘れたかった。
そうすれば、モヤモヤは消えると思ったから。

数日後、十代目から電話がかかってきた。
なんでも山本と一緒に宿題をしてて、わからない問題ができたという。
ここにオレを呼んで教えてもらおうかと思っていたが、山本が帰ってしまったらしい。
十代目のほうは一応できたらしいが、連絡を取るとまだできてないらしい。
十代目が自信がないというのでオレが頼まれた。
さすがにボスの命令なので、断るわけにもいかず夕方山本の家に行った。

山本の親父さんも、山本自身もオレを快く家に上げてくれた。
オレは早速山本に勉強を教え始めた。
だが、やはり野球バカだ。
教えるのにもかなりの時間がかかった。
もう同じことを何度も説明しているので、言葉を考えるのが面倒になった。
ので、まるで鸚鵡のように繰り返した。
その間もオレは、あの事ばかり考えていた。
「元気ないね」
山本が突然言い出した。
オレはちょっとびっくりした。
だが、一々言うのが面倒なので「別に」とだけ答えた。

気がつくと夜8時を回っていた。
親父さんから、「獄寺君もどうだ」と夕食にマグロ丼をご馳走になった。
山本の勉強はその後も続いた。
夜11時を回り、ようやくすべての勉強が終わった。
オレはすぐに帰ろうとした。だが山本に呼び止められ、オレの耳元で再びあの日と同じ言葉を囁かれた。オレは咄嗟に山本を突き飛ばした。
「痛ぇ〜獄寺。」
「てめぇ!オレはあの日ちゃんと言っただろう?!」
「だって理由聞いてないもん。」
「あ゛〜!ンなもん言う必要無ぇだろうがよ!」
「ひっでぇ獄寺。」
山本は笑っていたがオレはあの日から消えないモヤモヤと苛立ちが治まらなかった。
「じゃあ理由言ってよ、獄寺〜」
オレはこの腹が立つ声を聞きたくなかった。
オレの全てが狂いそうな感じがした。
「却下した理由か?!答えてやるよ!てめぇのことが大っ嫌ぇだからだよ!!!」
オレはそう言い残し、山本の部屋を出て行った。
親父さんに「御馳走さんでした!」と、お礼を言い、あの場所から離れた。

家に帰ってホッとした直後、オレの頬を涙が伝った。
オレには涙が出た理由が分らなかった。
理由を考えれば考えるほど涙が出た。時計は夜中の12時を回っていた。

オレは次の日も学校へは行かなかった。
十代目が居るので行きたいのは山々だが、あのムカツク山本が居ると考えると目頭が熱くなり、行くことができなかった。
オレが学校に行けるようになったのはその1週間後だった。
その日は不運にも十代目が休みだった。
十代目のために今日は学校に来たようなものだったので、帰ることにした。
玄関へ行くと山本に呼び止められた。オレは今までの出来事をいっぺんに思い出し、また泣きそうになった。
オレは屋上に走った。
当たり前のように山本が追いかけてくる。
屋上に着くと、山本が1週間前の出来事についての心境を語った。
「・・・なぁ獄寺。何でオレのこと嫌いなの?」
なんて女々しい質問だと思った。
だが、これに答えれば追いかけてこない。
そう考えると、口が勝手に動いた。
「全部だよ!!!」
オレはまた家まで走った。
疲れ果て、ベッドに倒れこんだ。
またジワリと目頭が熱くなり慌てて首を振った。
TVをつけても面白い番組はやっていなかった。
オレは何か気を紛わしたかった。
面白くもないニュースを聞きながら考えた。
別にあいつのことはそんなに嫌いじゃない。
友達としては。(でも友達とも思ってない)
ただ、恋人とか、恋愛とかと言われれば嫌いだ。
第一男同士でどうしろって言うんだよ・・・。

なんてことを考えながらオレはふと思った。
なぜこんなにも考えるんだろう。
嫌いな山本のことをこんなにまで・・・。
そしてこの心の中のモヤモヤは何だろう。
好きってどういうことなのか。
あいつはなぜオレを好きなのか・・・。
―――――山本のことをこんなに考えてるオレの気持ちって・・・?
疑問は降り積もるばかりで、答えは一向に見当たらない。
オレは頭の中を一回リセットすべく眠りについた。

3日後、オレはまた昼から学校へ行った。
その時は幸い十代目もいらっしゃった。
十代目に今まで居なかったことを謝罪し、普段通りに会話をした。
昼休みが終わるチャイムを聞き、十代目は先に教室に帰られた。
オレも残りのパンを頬張り十代目の後を追おうとしたが、ふと隣にいた山本が気になった。
オレは昨日考えたことを思い出した。
オレの口からは意外な言葉がでた。
「・・・本当にオレのことが好きなのか?」
自分でもなぜ訊いたかわからない。
少し黙って山本が口を開いた。
「・・・さあな。」
オレはなぜか涙が込み上げてきた。
「・・・そうか・・・。」
オレは涙をこらえながらいい、その場から逃げた。
あの日追いかけてきた山本は後ろにいない。
あの日の「好き」という言葉は、あいつの口からは聞けなかった。
そう思うと、こらえきれないほどの涙が溢れ出てきた。
オレはトイレに入り、心を落ち着けようとした。
だが無理だった。
止めたい涙、でも止まらないこの気持ち。
何なのか分らない。

誰かオレの気持ちを教えてくれ・・・

そのあと全力疾走で家に帰った。
オレはそのあとも理由のわからない涙が止まらなかった。
泣き声こそあげなかったが、泣いたせいで掠れた声。
涙を拭いて赤くなった目、熱くなった顔。
オレにはどうすることもできなかった。
オレは一体何が悲しくて泣いているんだろう?
たぶん一生でこんなに泣いたことはないだろう。
オレは何を思っているのだろう・・・。
なぜか山本の顔が浮かぶ。
忘れようとした。
でも、忘れることはできなかった。
山本は、モテるし、性格だって悪くないそこらへんに居そうな野球バカだ。
そんなやつを思い出す度心の中がモヤモヤして、涙が溢れてくる。

その夜、山本から電話がきて、呼び出された。
別に行く義理なんて無いのに、行こうと思ってしまった。
オレは外が寒いのと、赤くなった顔を隠したいので、マフラーと帽子を被って外へでた。
待ち合わせた場所に行くと息を切らせた山本が既にいた。
オレは山本からの3度目の告白を聞いた。
「獄寺。オレ・・・これで最後にするから・・・。3回。そしたら諦めるから・・・。獄寺、オレやっぱり獄寺のこと好きだよ・・・。」
オレは俯いていた。
オレは考えた。
すると案外あっさり答えがでた。
今までは、この答えを認めたくなかったのかも知れない。
モヤモヤしたのも、涙がでたのも、山本のことばかり考えたのも・・・。
オレはその答え通りに動いた。
決して声には出さなかったけど。
オレは自分の頭を山本の胸につけた。
山本は恐る恐る手をオレの背中にまわした。
「獄寺・・・ありがとぉ〜。」
山本はそう言ってオレを強く抱きしめた。
ちょっと苦しい気もした。
それをやり返すかのようにオレも山本の背中に手を回し、力いっぱい抱きしめた。
オレの行為が不快ではなかったのは、きっと答えが合っていたからだろう。
2〜3分経ち、山本の力が弱まった。
オレも力を弱め、未だ赤い顔を山本に向けた。
オレの頬に山本の手が当てられ、山本のほうにゆっくりと引っ張られた。
そのままオレは山本の手に身を委ね、オレの唇が山本の唇に触れた。
少し、ほんの少しだけだった。
オレは再び山本の力強く、長い腕に抱かれた。
「なぁ獄寺。今日獄寺の家に泊まって言い?親父には言ってあるから・・・。」
「おい、お前もしオレが断ってたらどうするんだよ?」
「野宿?」
「バカじゃねぇの?」
「でも・・・」
オレは呆れてそれ以上言えなかった。
「わかったよ・・・。」
「ほんと?ありがとな♪」
そう言ってオレは歩き出した。
だが、山本に呼び止められ、手を繋ぐことを求められた。
周りの目は気になるものの、さっきOKしてしまったからには断るわけにもいかないので渋々承諾した。
「夜だから」という理由をつけて。
山本はまたうれしそうに笑った。
家に着き、時計を見るともう夜中の1時を回っていた。
ったくコイツは一体何時に人を呼び出してるんだよと思った。
オレの家にはベッドが1つしかないが、さすがに2人で一つはキツかったのでベッドを背もたれにして寝ることにした。
オレは山本に手を握られながら眠った。
オレの頭は、山本の肩の上にあった。
最近ずっと泣きながら眠っていたオレは泣きつかれたせいもあり、久しぶりに心地よく眠れた。

ただ、オレにはいくつかの疑問があった。
オレは一体いつから山本を好きだったのだろう。
なぜあの時嫌いを断ったのだろう。
なぜ今までコイツのことが好きだと気付かなかったんだろう。
疑問は考えれば考えるほど溢れてくる。
現時点で手を繋ぎさらに身体を預けてる時点で、すでにどうでもよくなっていた面もあった。
考えても仕方がない。
事実を受け入れなければならない。
本当は伝えたいことがたくさんある。
でも今のオレでは無理だが、10年後はきっといえる。

オレは山本を愛してる




獄寺が恋に気づくまで(のつもり)
山本が若干ウザかった←
んでもってやっぱり色々おかしい。

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あきゅろす。
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