月光下では穢れきえゆく 真暗な空に雲浮かび、 望月一つ、 暗き夜空を照らす光となる。 人は其れを月光と呼びて、神聖な物とす。 青く輝く其の光は どんな穢れ、 邪をも溶かしてゆく。 【月光下では穢れきえゆく】 「……。」 此の頃神子は、元気がないと思う。 それは怨霊を封印して疲れているからかもしれない。 それは慣れない世界に居るという不安かもしれない。 …私が足手まといだからかもしれない。 私が穢れているからかもしれない。 だけど神子、 あなたには… あなただけは、 いつも元気で、 笑顔で居て欲しい。 それが私の安らぎだから。 「神子……。」 私は笛を奏で始めた。 祈りを込めて。 *** 〜♪ 「ぇ…?笛の…音?」 とても優しく、暖かな、 笛の音に誘われるかのように、 音の聞こえる処へと足を運んだ。 其処には縁側に座り、 神聖なる青い月光を浴びて笛を吹く… 「敦盛さん?」 すると、 笛の音は驚いたようにピタリと止み、此方を向いた。 「みっ、神子?!」 敦盛はとても驚いたような顔をして、神子を見た。 いつもは可愛らしいと思っていた顔だけど、 今は月光を反射して、大人みを帯びた顔をしていた。 「こんな遅くにどうして此処へ?」 「綺麗な笛の音が聞こえたんです。」 「き、綺麗などっ…」 そう言ったきり、敦盛は黙ってしまった。 私の笛が綺麗なはずがない。 何故なら私自身が穢れているから。 「ねぇ敦盛さん、さっき吹いてた曲は何て言うんですか?」 神子は唐突にそんな事を聞いた。 「あ、その…私の故郷に伝わる物なのでそういうのは…」 「へぇ…なんだか良いいですね、そういうの。確かに懐かしくなるような音でしたし。 あ!あんなに綺麗な曲なんです、敦盛さんの故郷はきっと綺麗な処なんですね!」 「あ、あぁ、とても綺麗な処だった。…源氏と平家の戦が始まるまでは…。」 「…ごめんなさい。」 「え、何故神子が謝る?私は何か変な事を言った・・のか?」 「…嫌な事思い出させちゃったみたいですから。」 「いや、そんなことは…。」 もう秋も終わるという月光の下で、 二人の間に長い長い静寂が訪れた。 この季節は夜になると寒さが厳しいものとなる。 それを増徴させるかのように、 びゅうっと冷ややかな風が吹く。 その月光当たる銀色の風は、 敦盛と神子の髪の毛をさらっては過ぎ去ってゆく… 此処で静寂を破ったのは敦盛だった。 「神子。秋風は体に障る。屋敷内に戻った方が良い…。」 そう言って自分の着ていた上衣躊躇しつつを神子にかけた。 「敦盛さんも風邪ひきます。中に入りましょう?」 「もう少し、笛を吹いて居たくて…。」 そう、 あなたへの祈りを込めた笛を、 穢れを背負った重さを、 弱気な自分への戒めを、 八葉として神子を守るという使命を、 今、この笛の音で誓わせて下さい。 「じゃぁ、私も一緒にいていいですか?」 そう問われた敦盛はまた目を丸くして驚いた。 けど、 今度はそのあとに少しだけはにかんだように微笑んで笛を奏で始めた。 〜♪〜♪♪〜 音が流れる。 穢れのなき音が… 敦盛も笛も… 其の周りの物全てが、 青みがかった銀色の月光を浴びて輝く。 何の穢れもなく。 そして、 笛の音は綺麗な旋律の上に月光を乗せて、 何処までも、 何処までも、 綺麗な音を響かせた。 滑らかに、 敦盛の祈りと誓いを詠いながら End あとがき まだ遙か全然プレイしてない時に妄想のみで書いたものです。 稚拙な文ですみません。 あっつんの笛の音が綺麗過ぎていつもそこだけリピートしたりしています 笑 2005.11 |