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dream
想い人
目を向けた先にあったのは、私の鞄をひっくり返している神楽ちゃんの姿だった。
筆箱や教科書、嘘のように大量の銀魂の漫画、漫画だけでは飽き足らず、銀魂のCDやDVDまで入れていたので、それらも重なりあいながら机の上に撒き散らされる。
本人を蚊帳の外に置いて、3人は私の私物を漁り始める。
どんな拷問!? 恥ずかしすぎる!
「お? なにこれ、俺超格好いいじゃん」
「こんなに……どうやって入ってたんですか……」
「酢昆布ー! 酢昆布入ってたアルー!」
ああもう、収拾がつかなくなってきた。
この人達(主に銀さんと神楽ちゃん)自由過ぎて手に負えないよ……っ。
「ん?」
私が頭を抱えていると、なにか見つけたらしい銀さんがそれを見つめた。
「なあ、これって……」
神楽ちゃんを手招きし、新八をさらに自分に寄り添わせ、井戸端会議のようにひそひそと話し合いをしている様子。
「……?」
なにを見てるんだろう。
私にとって都合の悪い物だったら最悪だ。
ましてやロック画面や待ち受けが大好きな総悟様の画像に設定してあるスマホなんて見られたら、今のこの状況よりもっと恥ずかしくなるのは目に見えている。
…………えっ?

「ーー!?」

思わず凄まじい勢いで立ち上がり、銀さんの手の中にある物を切羽詰まった形相で奪い去る。
案の定、スマホだった。
画面は煌々と光を放っており、「俺の彼女のケータイでィ 勝手に見たら殺しまさァ」と文字の入れられた、不敵な笑みを浮かべる総悟様がこちらを見ていた。
「……見ました?」
物凄く気まずそうな、硝子を割ったことが見つかった小学生のようにばつの悪そうな表情の3人が、揃って頷く。
「……っ」
かーっ、と全身が熱く、赤くなるのと同時に、私の目からは涙が溢れ出てきた。
「恥ずかしい……」
それはもう、死ねるぐらい。
どうしよう、絶対バレた。私が総悟様を好きだ、って。「俺の彼女」とか完全にバレる単語だよ、私の馬鹿! ていうかこの3人にバレたら本人に伝わる可能性大だよね? 変な女だって思われちゃうよ! どうするのどうすればどうしたら、ああああああああああっ!
狂ったように悶える私を見て、銀さんが異常なほどに優しく声をかける。
「お、落ち着けって」
「落ち着いていられません!」
さっきまでびくびくとして大人しかった客人の豹変ぶりに、唖然とするしかない3人が、それでも落ち着かせようとお茶を注いだり、テレビをつけたり、銀魂の漫画を目の前で開いて読ませてくれたりした。
でも……。
『中に逃げ込んだ攘夷志士の逮捕を急いだ真選組隊士がまたも建物を破壊したようです! ご覧ください、この酷い有り様!』
つけたテレビには、瓦礫の山と化した建物の前で、こちらにピースを送ってくるバズーカを肩にかけた総悟様の姿があり、開いた漫画には、大ゴマで涼しい顔をして台詞を言う総悟様の絵があって。
いたたまれなくなった私は、泣きながら部屋を飛び出した。

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あきゅろす。
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