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dream
トリップU
「ん……」
まつげを震わせゆっくりと目を開けると、真っ暗な視界に光が刺し込んだ。
そこには木の板の組み合わせでできた天井があり、私の家のものと酷似していたため、私は坂を転がり落ちたあと家に運ばれたのだと思った。
……おかしい、なんだか違和感を感じる。
あんな染みあったっけ?こんなに色薄かったっけ?
これは、自分の家じゃない。
そう認識すると、無意識のうちに、もっと状況をよく知るため部屋を見渡そうとしていた。
左を見ると、殺風景が広がっていた。
視界の端に映る布団以外、見えるのは畳と壁だけ。
この部屋の主は男の人なのだろうと、直感的に悟った。
次に、ひだ……り……。
「…………えっ?」
思わず、上半身を起こしていた。
乗っかっていた布団が、ばふっ、と音を立てる。
ぎ、ぎ、ぎ、銀さん!?
なっ、なんで?なんで隣に寝てるの!?しかも同じ布団だよ!?
夢にまで見た「銀魂世界の住人」との出会い(しかも主人公!)に、動揺しないではいられなかった。
なにこれ、なにが起こってるの?
私の夢?……ああ、そうか、夢かー!
そう思い至った私は頬を指で摘まんだ。
原始的な方法だったが明瞭に結果は出て……痛かった。
ん?ということは夢じゃない?
も、もしかして……今この状況は、漫画の展開とかでよく見る「トリップ」ってやつ?
じゃあここは銀魂の世界で……総悟様に、会えるかも!?
驚きと戸惑いと、この上ない喜びから涙が出そうになったそのとき、ぴしゃんっ、と襖が開いた。
目を丸くしてその方向を見ると、相変わらず眼鏡をかけた袴姿の新八と、寝起きだからかいつものお団子がない神楽ちゃんがいた。
「……新、八…………神楽、ちゃん……」
はっ、と気づいたときにはもうすでに2人の名を紡ぎ切っていた。
小さな呟きだったけれど、聞き逃さなかった新八が怪訝そうに眉を寄せた。
「失礼ですけど、初対面ですよね?どうして僕たちの名前を……?」
私はさらに、顔を困惑の色に染め上げた。
ーーなんて答えればいいの……!?

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