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dream
トリップ
「銀さーん。まだ寝てるんですかー?」
志村新八が『万事屋銀ちゃん』へ来ると、中はしん、としていた。
まるで誰もいないように静かだった。
この家のペットである大きな犬ーー定春でさえも大人しく部屋の隅で寝ている。
神楽も起きていないらしく、襖が開けられた形跡はない。
まったくどれだけだらしないんだか……。
新八は半ば呆れながら、この家の主ーー坂田銀時を起こそうと、寝室の襖を開けた。
閉めた。
「……」
いや、見間違いだ。そうだ見間違いだ。
銀さんの横に女の子が寝ていたなんてただの錯覚だ、錯覚。
もしくは猿飛あやめ、もといさっちゃんのときのように、なんらかの理由で銀時の横で気絶してしまったに違いない。
「……」
どうしよう。
もう一度開けて確認するべきか否か。
いやでも一瞬見ただけでも結構可愛い子だったし、僕より年下のようだし……銀さんの隣にいるなんて、なんとなく不安だよ……。
そんな感情が頭の中でぐるぐると回る。明らかに困惑していた。
「ん……」
新八が動けないでいると、くぐもった可愛い声が襖の向こうから聞こえた。
そしてしばらく、静寂が続いた。
なんとなく鼓動が速まる。
「…………えっ?」
襖の向こうの少女が、ばふっ、と音と共に声を発した。
これによって新八は襖を開ける決意をした。
銀時の隣にいた少女は、きっとこの状況に望んでなったわけじゃない。
そう決めつけて、新八は戸に手をかけた。
「新八、なにやってるアルか?」
「うわあっ!?」
緊張で張り詰めていた空気が、後ろからかけられた神楽の声によって一瞬にして弾け飛んだ。
ゆっくりと開けようとしていた襖が、驚いた勢いに乗って勢いよく開いてしまった。
「か、神楽ちゃん!いきなりなにしーー」
新八は、中を見て硬直した。
美少女が、いた。
寝起きということを微塵も感じさせない張りのある白い肌、大きな丸い目、蕾のような薄い桃色の唇、華奢に見えて胸は大きい女の子の魅力を詰め込んだ肢体……。
見た目だけで、とても愛らしく見えた。
長い髪の毛は寝癖がついてぼさっとしていたけれど、全然気にはならなかった。
「うおぉっ!?誰アルかこの美少女!」
新八の後ろからひょい、と顔を出して部屋を覗き込んだ神楽が、叫んだ。

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あきゅろす。
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