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小説
月の陰〜第一話〜
〜夜の幻〜

時は夕刻・・
太陽も落ち始め、ちらほらと星が見え始めているような時刻だ。

今から家に帰宅する者、母親と一緒に買い物をしている子供、部活帰りの学生達・・・
そんないつも通りの平和な一部分で平和ではない場所があった・・・

それは異様な光景だった。
狭い路地に、いかにもガラの悪い集団とそれに対峙している長髪で淡いピンク髪の女(メリケンサック装備)が居た。

女は目の前に居る集団に臆する事なく、反対に今の状況が嬉しいというよりも楽しんでいる様子だ。

そこから数歩下がった所にもう一人、短髪で「Free is the Best!」と印字されているTシャツを着た男が居た。
だが、男は我関せずといった感じで電信柱の近くでボーっとしている。

そんな二人の様子を伺っていた集団の内の一人が痺れを切らしたのか、唸り声を上げて女の方へと拳を振り上げながら向かっていった。
それに釣られるようにして、後ろから数人追いかけるように後に続く。

女は段々と相手に距離を詰められているにも関わらず、嬉々とした表情は崩れない。
逃げもしない相手に一瞬戸惑うも勢いがあるため、急に止まる事はできず、そのまま女を殴り飛ばそうとした。

しかし、その突き出した拳が女に当たる事は無かった。
反対にその男は軽く数十メートル先までぶっ飛ばされ、壁にめり込んでいる。
後に続いて居た男達は一瞬何が起こったのか分からず、ただ今起こった事に唖然としていた。

その空気を壊すかのように女が膨大なため息をつきながら目の前に居る男達に言い放つ。

「ちょっとぉ〜!かなり意気込んで来た癖にめちゃくちゃ弱いじゃない!この桃香様に喧嘩売るんだったら、少しは手応えある奴連れて来なさいよ!」

”桃香”という名前を聞いた瞬間、男達の顔は顔面蒼白になり、中には気絶…又はその場から逃げ出しさえしている者も居た。

「って、そこ!何逃げてんのよ!!」

逃げた数人の男を見つけるとありえないスピードで後を追い、追い付いた瞬間、装備しているメリケンサックで目の前に居る数人の男を数秒で片付ける。

「さ・て・と…逃げたりしたら、どうなるか分かってるわよね?」

くるりと残った男達の方に体を向けた桃香の背後に悪魔が見えたのは気の所為ではないだろう。
桃香が満面の黒い笑みを浮かべた直後、男達の悲痛な叫び声が響いた。

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あれから数分後、目の前の光景はさらに異様となっていた。
強面の男達が全員ボコられ、桃香に向かって土下座をしている。
その中のリーダらしき男が震える声で謝罪していた。

「すっんませんでしたぁぁぁぁぁ!!あなたがあの桃香様だとは気付かずに無礼を働いた事をお許しくださいませぇぇぇぇぇ!!ほ、ほら!てめぇーらも地面に擦れるぐれぇーに頭下げろ!!」

このまま地面に埋まるのではないかというぐらいに頭を下げる男達を膨れっ面をした桃香が見下ろす。

「こ、このお詫びは桃香様が好物とされている”メロン”を献上させていただきます故、今回の事を許してはいただけないでしょうか?」
「メロン?」
「はい!特上のメロンをご用意させていただきます!」

メロンと言う単語を聞いた桃香は先ほどまでの膨れっ面はどこへやら・・・超満面の笑みを浮かべていた。

「良いわよ。今から5分で持ってこれれば許してあげる。」

機嫌を取ったのはいいが無理難題を言う桃香に男達は行き着く暇もなく、すぐさま、特上のメロンを買いに走り去った・・ただ一度、桃香に向き直り敬礼をしていたが・・。

走り去った男達を見送った桃香はずっと後ろでボーっとしていた男に話しかける。

「ねぇねぇ!猛!今回のメリケンサックの威力、前より上がったでしょ!」

嬉々として言う桃香に猛と呼ばれた男は眠たそうに答える。

「ん〜・・・・上がったんじゃない?」

自分の欲しい回答が来たことでさらに機嫌を良くする桃香。

「うふふふ!そうよね!今まで使ってたのってすぐ壊れちゃうから困ってたけど、今回のは私に合ったようね!」

どれだけ壊すんだとツッコミを入れたかった猛だが、眠たさに負け、言うのを止めた。

「さてと、あいつら遅いわね。あと、1分で戻って来なかったらぶっ潰す。」

さすがにさっきの男達が可哀想になり、これにはフォローを入れる猛。

「いや・・・さすがに…5分は、きついと思うが?」
「知らないわよ」

折角のフォローをバッサリと切り捨てる桃香。
そんな二人に話しかける者が居た。

「お前・・・それはさすがに可哀想だろ。」
「あら?それを承知で買いに走ったんだから、帰って来なかったら、ボコるのは当たり前でしょ?」
「だが、この近くに八百屋どころか、店もねぇーだろ。」
「し〜らないw」
「おぃ」
「それよりも何であんたがここに居るのよ、徹」

徹と呼ばれた短髪の男は呆れながら桃香と猛を見る。

「任務だ、任務。」

任務と聞いた瞬間、桃香は喜び、猛は半分寝ていた。

「おぃ、猛。寝るな。」
「ん〜・・?寝てn・・・zzz」
「寝てんじゃねぇーか!!」
「もう!猛なんて放っておいてさっさと任務行くわよ!!」
「いや、こいつも居なきゃいけないんだが・・・」
「なら、私が殴って起こせばいいわね!」
「それは止めてくれ。」
「・・・・痛いのは勘弁・・・」
「あ、起きたな。」
「チッ、殴れなかったじゃない」
「・・・殴られたら…確実に・・死ぬ・・」
「いいじゃない、永眠できるんだから」
「いや、よくねぇーだろ。」
「それより!任務行くわよ!!」
「はぁー・・」

膨大にため息をつき、頭を抱え込む徹に猛は肩に手を置き、そして一言・・・
「・・・・幸せ…逃げるぞ?」
「・・・お前らの所為だ。」


ж


場所は変わり、道中で歩きながら寝てしまった猛を引きずりながら、目的の場所へと到着した徹と桃香。
そんな3人を出迎えた者が居た。

「あ、皆さん早かったですね・・・。」

徹達より1,2個年下であろう水色の髪で左目が前髪で隠れている男が控えめに話しかけた。

「そうか?かなり遅くなった気がするが・・」
「いえ、もう少し時間がかかるかなと思っていましたので・・・」
「・・・それは遅れる事が端から分かってたってことか。」
「あ、はい。師匠はそれを見越してこの時間に皆さんをお呼びしたようです。」
「よく分かってるよな、本当に。」

苦笑交じりに答える徹を他所に桃香はずんずんと中に入っていく。

「ちょっとぉ!さっさと任務聞いて暴れるわよ!」
「あ・・・そっちの部屋ではなくて、右側の扉から地下へ行ってください。」
「もう!ややこしいわよ!」
「師匠がどうしても、地下の部屋で仕事がしたいとのことでしたので・・。」
「むぅー、なんで地下なのよ。」
「一応、情報の管理をしてるんだから、こういうややこしい場所の方が安全なんだろう。」
「私が行く時ぐらい、普通の場所でいいじゃない!」
「それは無理があるだろう。」
「えっと、師匠の場所が複雑なので、ご案内します。」
「ああ、屡雨勾、頼む。」

屡雨勾と呼ばれた少年は軽く頷いた後、3人の先頭にたって地下へと足を運んだ。
その後に3人が続く。

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入り組んだ道を幾度か曲がり、ようやく真っ直ぐな通路に辿り着く。そのまま通路を少し歩くとドアが見えてきた。
先頭を歩いていた屡雨勾はそのドアの前で止まり、取っ手に手をかけ、ドアノブを回す。

開いたドアから部屋に入るとそこは薄暗く真正面にはいくつものモニターが見受けられた。
どうやら、どこかにある隠しカメラから受信した映像が流れているらしい。
そのモニターを背に椅子に腰掛けつつこちらを見ている男が居た。

「師匠、皆さんをお連れしました。」
「む〜、ここまで来るの面倒くさい〜!塒勾先生!もう少し、分かりやすい所に部屋設置してよ!」

屡雨勾に師匠と呼ばれ、桃香には塒勾先生と呼ばれた男はケラケラと笑いながら、目の前に居る4人に話しかける。

「あ、ごめんねぇ〜?ちょっと今してる情報収集がかなりの量の情報だったからね〜、こういう場所じゃないと情報をまとめたり、確認ができないんだよね〜ケラケラ」
「むぅ〜、なら仕方ないわね・・」
「ルッ♪」
「あ、ルピちゃんもそう思うかい?ケラケラ」
「ルッ!ルッ!」

よく見れば、塒勾の右肩にひよこらしき鳥がとまっている。見る限り、相当懐いているようだ。

「はぁ、っといい加減起きろ、猛」
「・・ん〜?・・・着いた?」
「とっくにな。」
「・・ん。」
「っで、今回の任務は何だ?」
「誰かをぶっ飛ばす任務よね!」
「・・それとも・・情報収集?」
「桃香・・お前の頭にはぶっ飛ばす任務以外には考えられないのか?」
「うん、ないわ!」
「おぃ。」
「本当に君達仲いいよねぇ〜。あ、そうそう、今回の任務はねぇ、最近手に入れた力を試す為にあちこちで放火をしているこの犯人を捕まえる事だよぉ。」

塒勾はピラリと写真を3人に見せる。
いつの間にかルピが左肩に移動している。
そんな事は気にせず、その写真に写る犯人をチラリと見た後、桃香は不満そうに相手を見やる。

「ふ〜ん、捕まえるだけ?殺っちゃだめなの?」
「うん、捕まえるだけだよぉ〜ケラケラ」
「つまんなぁ〜い!!」
「あ、けど、抵抗するようならボコボコにして動けなくするぐらいならいいよぉ?」
「本当?!じゃあ!ボコボコのギタギタにする!」
「・・・やりすぎは、よくないと思う・・。」
「うるさいわね〜、許可も下りてるんだからいいでしょ!」
「・・けど、相手は力一応使うみたいだし・・気をつけた方がいいと思う・・けど・・」
「別に気をつけなくても大丈夫よ!」
「・・・本当かな・。」
「ん〜、まぁ桃香ちゃんとの相性なら大丈夫だと思うけど、一応”力”について説明しとこうか?ケラケラ」
「いらな〜い!別に必要ない知識でしょ?」
「・・いや・・必要だから。」
「ということで、徹君。説明よろしくぅ〜ケラケラ」

徹はため息をついた後、桃香に向き直り、説明を始める。

「さっきから会話に上がっている”力”というのは特殊能力の事。その特殊能力って言うのが自然界に発生する力…つまり、火・風・水・雷・土・草などの事だ。…この事は知ってるな?」

桃香が頷くのを確認した後、話を進める。

「さっき言った力には属性があって、その属性には優劣・・・つまり相性っていうのがある。例えば今回のターゲットなら”火”だ。これに有利な属性は”水”つまり桃香の属性に値する。」
「ねぇ、相性がただ悪くなるだけなんでしょ?別にこっちが強かったら相性なんて意味ないんじゃない?」
「はぁ・・確かにこちらが強ければの勝てない事はないが、仮にお前と同レベルの相手ならば相性が悪ければ苦戦を強いられることになる。」
「無いわ!私が苦戦するわけ無いわ!」

間髪入れずに否定する。
その台詞に呆れた表情で桃香を見やる。

「どんだけ自信あんだよ・・・。」
「ふふん!そりゃ、自信あるわよ!現在まで負けた事ないもの!それに私はFだからね!そんじゃそこらの奴には負けないわよ!」
「まぁ、そうだが・・だが、仮に同じFで相性が悪ければかなり苦戦するぞ。」
「ないわ!それにF以上なんてないもの!」
「・・・・いや・・ある・・・」
「はぁ?何言ってんのよ!猛!F以上はないでしょ!」
「ん〜・・確か一つあったような・・。」
「はぁ、一応、階級についても説明しとくか。」
「あの、確か能力のある人の事をDCと呼びますよね?」
「ん?ああ、屡雨勾の言った通り、さっき言ってた属性を持つ者の事をDCと呼ぶ。」
「DCには力量などによって5つのアルファベット…さっき桃香ちゃんが言ったFなどで分けられているよねぇ?ケラケラ」
「ああ、まず、力量などによって分けられているその5つのアルファベットは「N」・「T」・「S」・「F」・「D」だ。ちなみに力を持たない者又は、先ほど上げた属性以外、つまり自然界の力ではない者は「N」、力量が下の者は「T」、力量が中の者は「S」、力量が上の者は「F」、力量が特に危険と判断された者は「D」とされている。」
「ねぇ?その力量の区分は誰がしてるのよ?」
「それh…「僕らだよぉ。ケラケラ」塒勾、遮るなよ。」
「あ、ごめんねぇ?ケラケラ」
「塒勾先生なの?」
「ん〜、僕というよりも情報収集をしている人たちの情報を元に上のお偉いさん達が決めてるねぇ。ケラケラ」
「ふ〜ん・・っで、上で決められた私の力量はFってことなのね?」
「そういうことぉ。あ、ちなみに猛君もFだよぉ。ケラケラ」
「ん〜・・そうだっけ?」
「見た目からは強いって言うのがありえないわね。」
「ん・・・別に何でもいい・・」
「塒勾は確実に色んな意味でDだがな。」
「いやぁ、照れるねぇ〜ケラケラ」
「褒めてねーよ」
「ルッ」

徹がツッコミを入れた後にルピが塒勾の襟を引っ張り、小さな翼で塒勾の持っている写真を差す。

「ん?ああ、忘れる所だったよ〜。っと、はい、これがその放火犯の出没ポイントを記した地図とその放火犯の写真ね。」
「ここだな。っでこいつが放火犯・・」

徹は写真を確認し、懐にしまう。

「まぁ、君達にしてみれば凄く簡単な任務かもしれないけどねぇ〜」
「とっとと、終わらせてメロンた〜べよっと!」
「俺は・・寝よ・・。」
「はぁ・・・じゃあ、行って来る」
「いってらっしゃ〜い。ケラケラ」
「ルルッ〜!」

塒勾とルピちゃんに手を振られ、屡雨勾は会釈し、3人を見送る。
一方、徹、猛、桃香は任務をこなす為に夜の町へと繰り出すのであった。

to be continue...


はい!やっと第一話更新できましたぁぁぁぁぁぁ!!
どんだけ放置してんだ!って話ですよね〜。(汗)はい、本当にすみません。
これからどんどんキャラが増えます。(笑
今回は主人公である「徹」と幼馴染である「猛」、暴れるのが大好きな「桃香」、裏の情報屋でありかなりのドSである「塒勾」、その塒勾の弟子である「屡雨勾」、なぜか懐いている「ルピ」(人ではないが)を出しました。(笑
ただ、まぁ、話し方が統一してないのがあれですが。(苦笑)
えと、駄文ですが、読んでくださるという心優しき方は次回もよろしくです!
by 夜月

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あきゅろす。
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