漆黒の真実
3
「…お前、鮮血の歌姫か」
「お初にお目にかかります」
では、これにて失礼、と彼女はドレスの裾を持ち軽く膝を折り、頭を垂れてから部屋から去っていった。きらり、と彼女の首元のチョーカーの飾りが光った。
「クロウ、あんな凶悪犯といっしょだとは聞いてねぇぞ!」
「聞いてこなかったからな」
激昂する刑事に、ふっとクロウは笑った。その不自然な笑みよりも、僕らは刑事の"凶悪犯"という単語に引っかかった。
「人を殺してアクマを助けるってことさ」
「……矛盾してるわ」
リナリーの辛そうな声がした。クロウの口元だけが愉快に歪んでいる。
「黒の教団に入ってもらうぞ」
「こんな危険な人を入れるわけにはいきませんっ!」
「うるせぇんだよモヤシ!人殺しだろうがなんだろうがエクソシストには変わりねぇだろうがっ!」
「…入ってやってもいいけど、後悔しても知らねぇからな」
「上等だ」
いささか問題はあるけれど、こうしてクロウは無事僕らの仲間になった。
僕らはそのときまで気付かなかった。
あの時、クロウは笑わず、瞳は闇を映したように淀んでいた。
──…
「ヘブちゃん、よろしくね〜」
メガネをかけた細身の男がのんきに話すと、へぶちゃんと呼ばれた女性(?)が手触のようなものを体に巻き付き持ち上げられた。
(うへぇ、嫌な感覚)
「90…95…100…135…160…180、コムイ、180%だ」
静かに地面に降ろされた。室長は信じられない、というような顔をしていた。
「なんだ、高いのか?」
「非常にね。ま、さっきさらっと説明したけど、君のイノセンスは寄生型だから、シンクロ率は高くてはおかしくはないよ」
「ふーん」
目の前にいる彼は、仮面で表情がわからないが、まるでどうでもいいことかのように感じられた。
そう、本当にどうでもいいことかのようだった。
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