漆黒の真実


「クロウ!」

「…地下最奥に太陽がある」

無表情にクロウはそう話すと、霧が拡散するように消えた。

──…

「…と、言うことなんだが」

異様な威圧感で刑事が館の主人を睨む。何かまずいことのようで、薄ら禿げた頭油が汗で光る。

「この本棚、少しおかしいさ」

ラビが指差した先には、少し変わった本棚があった。何やら、本の並びが雑のように思えた。近くの食器棚は、几帳面に作者別色別と分けられているというのに。

「う、うるさいっ!近付くな!な、なんの権利があるって言うんだ!」

主人は汗を撒き散らすように、喚いた。刑事が雲を眺めるように、遠くを眺めてタバコに火をつけた。

「ただの捜査だ。やましいことが無ければ大丈夫だ?…それとも、やましいナニかがあるのか?」

にやりと刑事は笑って、煙を吐き出した。息が詰まってしまった主人を横目で見て、刑事は部下に指示を出した。

奥からは最近失踪した子供たちがいた。中には刑事の知り合いの子もいたらしく、苦虫を潰したような顔をしていた。

──…

事件は終わりを迎え、僕たちは引き続き、クロウの捜索を続けることになった。

「…お疲れさん」

「今までありがとうございました」

いや、と刑事は言葉を濁した。

「こちらこそ、ありがとうな」

「いえ、あの」

「クロウだろ?できれば連れていかないでくれるか?」

唐突だった。

「断る」

神田が即答した。任務を遂行しなければ、アクマや悲劇は消えない。

「……多くの奴を助けられると知ったら、アイツは負けっぱなしの俺を置いていく」

紫煙をゆっくりと刑事は吐き出して言い放った。

「…忘れんなよ、アイツはな、おせっかいなんだ。お前たちよりずっとな」

はにかんだ顔で刑事が笑った。

「夜のレンガ街の地下パブに行ってみな。そこの従業員がクロウだ。証拠はないが、間違いはない。……アイツを、頼んだぜ。この街のヒーローだ」

霧のような雨が音もなく降る。


刑事の顔が、泣いているように笑った。

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