版権-中編
狐くらべ(男主→(←?)響也)
アイツは嵐のように僕の心を掻き乱しては、何事もなかったかのように、去っていく。
──…
霧人の件が起きた日の夜。やはりと言うべきか、響也がきた。
「今日はずいぶん素直だね」
「勝手に言ってろ。疲れただけだ」
リビングに足を踏み入れたとたん、響也の顔つきが変わった。
「…兄貴、来た?」
「ん?あぁ、まぁ、来たな」
たいしたことではない、というように俺は返した。しかし、響也は納得のいかない顔している。
「…コーヒー飲んでいたよ」
──…
「そういえば、昔狐くらべっていう遊びあったよね。あれのおかげでずいぶん仕事が楽になったよ」
「あぁ、嘘を見抜く遊びだからな。その割には一回も俺に勝ったことないけど」
狐くらべで響也が勝てないのは俺がすべて事実を言っているから。響也に嘘は通用しない。
「やってみる?」
──…
「実は『冷蔵庫のプリンを食べました』」
「実は『プリンが嫌いです』」
ちなみにあの冷蔵庫のプリンは、もともと響也にあげようとしていたものだ。
「それは、ちょっと嘘臭くないかい?」
「ゲームだろ、見抜けよ」
嘘だとバレた時点でこのゲームは終了する。
「…実は『あの晩起きてました』」
響也の眼が鋭く光る。頭に警鐘が鳴り響く。2人の関係が崩れるような、そんな感覚が。
「…実は『好きな人がいます』」
「嘘つき」
響也が動揺したのが、見えたが、彼は誤って事実を嘘だと言った。
「お前の敗け」
「…なんで勝てないんだろうね」
さぁな、と俺は笑って紅茶のおかわりを取りに行った。
背後で響也が笑ったことにも気付かずに。
『狐くらべ』
(どっちが一番ズルい人?)
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