版権-中編
俺はアイツで彼は俺(霧人→男主→響也)
唐突にインターホンが鳴る。嫌な予感と違和感を覚えたが、俺は扉を開けた。
「やぁ」
「…あぁ」
…何か違う。何故かわからないけれど、この扉の前にいるのは響也じゃない。響也に似ているけど、つーか響也だけど、なんか違う。
「…どちら様ですか」
「酷いなぁ、友人の顔も忘れたのかい」
はい、響也じゃなーい。そんな暢気な台詞が頭に流れた。そう、扉の前にいるのは、
「兄弟揃ってタチ悪いッスね。その格好恥ずかしくないッスか?」
「…とりあえず中に入れてください」
どうぞ、と俺は霧人を中に招き入れた。奇妙な風景だ。部屋には響也の格好した響也みたいで響也に似てる響也じゃない人がいる。
「何が飲みたいですか?」
「いつも響也に出しているもので」
「…お湯ですよ?(半分は)」
「ホットコーヒーをブラックで」
慣れない香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。紅茶を出さなかったのは、響也に似ていても響也じゃないから。どうやら、俺はアイツを特別扱いしたいらしい。
「どうぞ」
響也がいつもいる位置に牙琉はいた。さすが双子というべきか、気味の悪いほど似ている。
「私が響也じゃないといつから?」
「インターホンが鳴ったときから」
霧人が嬉しそうに少しだけ頬を緩めた。あ、響也に似てる。
「…なんですか」
「響也のこと好きなんですね」
「ほっといてくださいよ。プライバシーの侵害です」
そうですか、とやはりどこか楽しそうな響也の格好をした霧人。似ていても、霧人は霧人でどこまでいっても霧人なのだ。
「そういえば、何か用事が?」
「デートのお誘いですか?」
「…僕に何か用が?」
あぁ、とどこか気の抜けた返事。響也に似ている霧人から俺は目線を移して、お茶を飲んだ。
「…抱いてよ」
響也のような声がした。
『俺はアイツで彼は俺』
(報われない恋がまた一つ)
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