版権-中編
友情以上、恋人未満(響也→茜/片思い)
昼下がり、突如インターホンが鳴った。家でのんびりと有休を楽しんでいた時だった俺は、機嫌が悪くなるのを抑えずに、扉を開けた。

「やぁ」

バタン

反射的に扉を閉めた、自分の運動神経に感謝した。けたたましく鳴るインターホンに俺は、仕方なく、扉にチェーンロックをかけて開けることにした。

「何で閉めるかなぁ」

「閉めたいと思ったから」

「そりゃまた唐突だね」

髪をウザイくらい爽やかに払い、笑いかけてきた。チェーン越しでも、俺は機嫌の悪さを隠さなかった。

「もっとはっきり言ってやろうか」

黒い笑みをニコリと浮かべた。どうぞ、と鎖の音を鳴らして、ジャラい検事が言った。

「危機感を覚えたんだよ」

「そりゃ僕を狼と認めたってことかな?」

ピキッと血管が動く感じがした。眉間のヒビが深くなるのを抑えられなかった。

「世界を破壊されるなんて、まっぴらごめんだ」

「好きだよ」

お前のそれは恋愛感情じゃない。
胸が締め付けられる、感じがした。…薄々気付いていた。途中から友情が違うものに変わっていったということを。

「ごめん、無理」

「清々しい笑顔だね」

「絶望にうちひしがれろ、イケメンは嫌いだ」

吐き捨てるように言った。
コイツは俺をからかっているだけだ。いろいろなことから、コイツには友達が少ない。だから、何かあった時、コイツは俺の所にくる。いつも、いつもだ。

「…入れよ」

チェーンロックを外して、顎で中に招き入れた。

「いやぁ、どうにも女の子に好かれなくてね」

恋愛の相談かよ、と心の中で悪態をついた。演技臭い動作から、コイツの真偽は俺にはわからない。

「…殴りてぇ」

「何故だろうね?あの子だけは振り向いてくれない」

よく話を聞く刑事の女の子だろう。遠い目をして響也はため息をした。

「茜さん、ねぇ。無理じゃね?チャラいの嫌いだし。それ以上に御剣のファンだし」

諦めろ、と俺は言った。…響也にも、自分にも。

「御剣?…あぁ、あの人」

「話した限り、チャラいの嫌いそうな子だったよ」

俺は、彼女が響也が嫌いだとは直接言わなかった。…だって絶対コイツ泣くから。

「……うーん、でもこれが僕だしなぁ」

響也は困ったように、慣れた手つきで髪を弄っている。少しいい紅茶の香りを楽しんで、俺はマグカップに口を付けた。

「存在が否定されてんだよ」

近くの雑誌を手に取り、流し見る。何故か静かな響也を見上げると、テーブルに顔を伏せていた。

「な、泣くなよっ」

「泣いてなんかないさっ」

バンッと響也琉は机を叩いた。勢いよく上げた顔の目は、うっすらと涙ぐんでいた。

「泣いてんじゃん!!」




──… こんな他愛もない会話が続くなら、まだ友達でいてもいいかな、と俺は思った。

当分この恋は、胸の奥に納めるしかないか、と。

そうしてまた俺は、コイツへの思いを横に流すのだ。


『友情以上、恋人未満』
(俺の恋は報われない)

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