版権-中編
知らぬ顔に存ぜぬ思い(男主→響也)
「あ、あの牙硫検事とお会いしたいんですけど」
(…弁護士バッジ?)
横から大きな声がした。見ると20代の若い青年と不思議な格好をした少女がいた。
「アポイントメントはお取りになっていますでしょうか?」
「あ、はい。王泥喜です」
「なんだよ、遅ぇじゃねぇか。早く来いって言っただろ?」
ラッキー、と思った俺は便乗することにした。え、と驚く2人に目線で頼み、そのまま後ろについていった。
「あ、あのっ!あなたは一体何者なんですかっ!?」
「声大きいね、君。俺は響也の数少ない友人」
うぇっ!?と2人はすっとんきょうな声を上げた。不思議少女はぴょんぴょん跳ねて、いろいろ聞いてきたが、部屋に着いてしまった。
「し、失礼しますっ!」
扉の向こうで声がした。弁護士の青年が扉に入り、不思議少女の後に俺が続いた。
「え、」
「よお、」
ポカン、と呆ける響也の前に弁当を掲げた。不思議少女はなぜか楽しそうに笑ってた。
「ほい、腹が減っては戦はできぬってな」
「悪いね」
「悪いって思ってないだろ」
響也が誤魔化すように髪をいじる。
「あの、なぜ、そう思ったんですか?」
「俺は人の嘘がわかるから」
「えぇっ!?」
なんてね、と笑って俺は部屋を出ていった。
「っ…あのさっ!」
背後で扉が開き、響也の声が響いた。
「何?」
「あ、ありがとう」
「どーいたしまして」
照れたように頬を少し染める響也に、嬉しいような切ないような気持ちを抱いた。俺は少し無理に笑って、その場から逃げるように去った。
不覚にも泣きそうになっていた。
(…人の気も知らないでほんと、気楽だよなぁ)
見返りのない行為に少しずつ苛立つ気持ちと、傷付けてはならない気持ちが交差する。
…捨てきれない思いをいつまで抱えていればいいのだろう。
『知らぬ顔に存ぜぬ思い』
(顔を覆った手に、雫が1つ落ちた)
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