版権-中編
なんだかんだ言って手放せないんだ(男主→(←?)響也)
時は戻り、響也の言うあの晩になる。
──…
「本当に好きなんだよぉ」
部屋はビールの空き缶が散らかり、響也のために作ったつまみの皿は空のままテーブルいっぱいに広がっている。
「はいはい、本気なんだよな」
うぅ、と響也はテーブルに突っ伏して、今に眠たそうに瞼が動く。俺はそっと缶を手から引き抜いて、遠くに置いた。
「まわりが見たら、どう思うんだろうなぁ」
散らかったテーブルを軽く片付けて、響也を見る。無邪気に寝顔を出して眠る姿は、法廷では想像もできないだろう。
「響也、風邪ひくぞ」
肩を揺らして響也を起こすと、体を捩ってまた寝息を立てる。仕方なく俺は、響也を抱き上げ、自分の寝室へ運び込んだ。
(無防備だろ、ホント)
服がシワにならないように着替えさせ、響也が起きたときのために、サイドテーブルに水を置いた。
俺は暗くなったリビングのソファーの上で、毛布一枚で寝ることにした。携帯のアラームを設定して、ゆっくりと目を閉じた。
「…好きだとか、もう無理か」
──…
(…ちょっと油断したかもなぁ)
響也は酔っていても大概のことは覚えている。記憶力は嫌になるくらい良い。…そんなことより、とりあえず今は"これ"をどうするか、だ。
今、俺の部屋のテーブルの上には、弁当箱がある。俺のじゃない、あの"バカ"のヤツだ。わざと忘れたのか、本気で忘れたかのどっちがだ。
(…どっちにしろ質悪いがな)
俺はバイクをとばして、検事局に弁当を届けに向かった。
──…
「ですから、アポイントメントなしでの面会はご遠慮させていただいております」
「とりあえず、俺の名前だけでも、あのバカ検事に伝えてくれればいいんですよ」
かれこれ30分も堂々巡りの会話だ。いい加減飽きた。あのバカは集中すると、飯も風呂にもトイレでさえ、忘れるんだ。倒れても知らねぇからな、ほんと。
『なんだかんだ言って手放せないんだ』
(がらくた詰めた宝箱が捨てれないあの頃のように)
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