版権-中編
『真昼のラストコール』
罪を許してはならない。
検事は弁護士に介入することはできない。だから、僕は言うよ。すべてを犠牲にしてでも守りたいものがあるから。
…わかって、くれるよな?御剣
──…捏造された証拠品とわかったとき、僕は真っ先に御剣を思い出した。…守るものが増えた。
閉廷後、すぐに人気のない場所へ行き、アイツに電話をかけた。
『もしもし、御剣だ』
寝起きの愛しい人の声がした。もう、二度と聞くことは、ない。
そっと外した弁護士バッジを光にかざして、深く息を吸った。
「こんな時間にごめん。……僕と、別れてくれ」
"自由と正義"を意味するひまわりと"公平と平等"を象徴する天秤。…僕は今、弁護士を辞めます。
『どういうことだ、成歩堂』
「…守るものが、増えたんだ。抱えきれないほどに、ね。君ならわかるはずだ。……僕の、気持ちも」
しばらくの重い沈黙がした。彼が考え事をしているときにする規則的な軽い音がした。
『…成歩堂、愛している。これからも、ずっと、だ』
うん、と声になるかならないかの大きさで答えた。
吹き抜けた風は、身に染みて痛い。熱いものが頬を濡らしたが気付かないフリをした。
目を閉じて、震える胸を抑え、そっと息を吸い込んだ。
「…じゃあ」
『…あぁ』
掠れたような声が、胸をキツく締めつけた。
バッジを握りしめて、しばらくすると連続的な冷たい電子音がした。
その日、成歩堂の携帯電話から"御剣"の名前が消えた。
『真昼のラストコール』
それでも僕らは"サヨナラ"を言わなかった
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