Dream
恋芽吹く(逆検/女主/狼)
検事局に見慣れた人影があった。狼捜査官だ。後ろに取り巻きがいないってことは、格下げされたか、プライベートということだろう。そんなことは気にせず、私は資料を受付に渡して、執務室に向かう。
「…どーも」
「御剣検事はいるか?」
受付に聞けよ、ウルフ、とは言えなかった。プライベートだから、受付に聞けないのだろう。見る限り、狼捜査官は御剣検事にお熱だ。…片思いで相手が男って痛い。
※勘違いです。
「生きてますよ、きっと」
「……そこまで案内してくれるか?」
頭にはいくつかの情報が巡る。私の知る限り、御剣検事には恋人がいる。何故か今日は有休でいない。……デートだろ。
※デートです。
「嫌ですよ、馬に蹴られて死ぬなんて」
彼は手を腰に当て、頭にハテナを浮かべた。ため息が出た。
「人の恋路を邪魔するもんじゃないですよ」
「お、おい待て、まさかアイツ…」
「ばっちり恋人持ちですよ。残念でしたねー、あと今日、御剣検事休みです」
スケジュールを確認して、歩き出すと、おい、と呼び止められた。
「おい、という名前じゃありませんが、何ですか」
「俺に付き合え」
一歩間違えれば偉そうな告白だが、彼女が振り向いた彼の手の中に紙切れが二枚あった。
「え、御剣検事と行き損ねたチケットを私に使うんですか!?…デリカシーねぇなウルフ」
ピクッと眉が動いたが、彼は数回呼吸を繰り返した。
「…無駄にするよりはいいだろうが、喫茶店の割り引きだ」
「あ、行きます」
「行くのかよっ」
恋の始まりって、きっとこんな感じ
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