版権-短編
"I love you."は手の中に(鳴門/キバヒナ)

夕暮れ時、街中は主婦で賑わい、暖かい光が灯り始めている。

「ヒナタっ!」

どきんっと胸が跳ね上がる。愛しい彼の声だ。

「き、キバくんっ」

「今帰りか?俺も帰りなんだ、一緒に、い、行ってもいいか?」

「う、うんっ!」

自分でもわかるぐらい頬が緩む。数ヵ月前までは、太陽のような人が好きだった。けれど、数ヵ月前に彼に告白したとき、失恋した。

──

「ヒナタのことは嫌いじゃないんだってばよ?けど、俺サクラちゃんが好きなんだ。だから、ヒナタとは付き合えない」

「…う、うん。わかってた、ことだから」

「ヒナタが良ければ、友達でいてくれるか?」

「うん」


──


そして、今、ここにいる。
薄暗い木々の中、セピア色にまわりが染まるのを見ている。だんだんと空気が冷え、手がかじかんで動かなくなる。
河原で1人でぼーっとしているところに彼がきた。

「ひ、ヒナタ?…ど、どうしたんだよ?虐められたのか?なんかあったのか?」

慌てふためく彼は、いつものように優しかった。
振られたときに、あまりショックを受けなかったのは、もしかすると、自分は告白する相手が間違っていたのかもしれないと思ったからだと思う。

「な、なんでも、ないよ?」

冷えた手をぎゅっと握られた。心配そうな顔でまっすぐ見つめられる。

そして──…

「…ヒナタ?」

「あ、ご、ごめんキバくん」

「……まだ、アレのこと気にしてる、のか?」

覗き込む顔は、眉が情けなく垂れ、真剣な瞳をしている。

「ううん、違うよ」

そっか、と彼は楽しそうにニカッと笑った。

「なんかあったら言えよ」

うん、そう俯く彼女は赤く染まった頬を隠すように言った。

長く伸びる影は2つの距離の中間地点で繋がる。


"そして──…"



そして、2人は今、付き合っている。




「"I love you."は手の中に」




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