逆転(BL)
真っ直ぐな君に幸あれ(響王/ミツナル要素有)
男を好きになりました、たぶん。
嫌味なくらいいつも爽やかで、誰よりも真実を追い求めて、真っ直ぐで熱い、そんな人です。
俺はきっと見向きもされないと思います。
けど、やっぱり好きなんだなぁ、って思います。
「オドロキくん、何か悩み事?」
いきなり現れた成歩堂さんが後ろから楽しそうに話しかけてきた。
「な、成歩堂さん!?だ、大丈夫です!!」
「さては恋の悩みかな?」
慌てて否定すると、それはそれは楽しそうに笑ってきた。
「ふーん、じゃあ牙琉検事のことかな?」
「あ、え、ま、まぁ」
「そっかぁ牙琉検事かぁ。それは大変だなぁ」
また楽しそうに成歩堂さんは笑って、他人事のように話した。
「な、何がですか!?」
「恋のライバルが多いじゃないか」
え、
え、
「えぇぇええ!?な、何で俺の好きな人が、えぇぇええ!?」
「ダメだなぁ、オドロキくん。簡単なはったりを仕掛けただけなのに」
成歩堂さんが大声を上げて笑った。…さっきから楽しそうだ。
「な、え、騙したんですか!?」
「人聞きの悪い事言わないでくれよ。オドロキくんが、勝手に話しただけなんだから」
うぅ、と嫌な汗がだらだらと噴き出てきた。やはり、この人は心臓に悪い。
「……き、気持ち悪い、ですか?」
「いや?実際僕もそうだからね」
頭が真っ白になり、気付けば口から大きな声が出ていた。
「相手は小学生の頃の友人でね。すぐに転校したんだ。弁護士の夢を持っていたのに検事になったから、弁護士になって法廷に会いにいった」
「成歩堂さんが弁護士になった理由って」
「他にもいろいろあるけど、アイツが検事になった理由を聞くため、かな。…不純かい?」
少し悲しみを持った瞳。けれど、優しい微笑みだった。
「い、いえ、その、いつからですか?好きに、なったのは」
「わからない。けど、アイツの弁護を受けようと思った時にはたぶん好きになっていたと思うよ」
「はぁ、……あ、ま、まさか!?」
自信満々に言われ、今まで成歩堂さんが話していたことをまとめると気付いた。
「気付いたみたいだね。付き合いたいなら、当たって砕けるんだよ。ま、頑張ってね」
「ちょっ、成歩堂さん!?」
ヒラヒラ、と手を振り去ってしまった。少し足取りが軽かったのは気のせいだろうか。
──…
俺は足りない頭で考えた。
けど、事態は何も変わらず、ただただ、牙琉検事に対する思いが強くなっただけだった。成歩堂さんの言う通り当たって砕けるしかないと思う。
…さらっと弁護士になった理由聞いたし。かなりの覚悟だったんじゃないのかなと思う。
だから、牙琉検事にすべてを伝えようと思って検事局にきた。
「が、牙琉検事!」
「ん?おデコくんか、久しぶりだね。どうしたんだい?」
「少しで、いいので、お話できますか?」
「うん、いいよ。もう帰るところだからさ」
いつもの仕草で彼は優しく笑ってくれた。
──…
「で、話って何かな?」
「これから俺が言うことは、事件に何も関係のない、俺個人の話です」
へぇ、と驚いたような珍しがった声を上げ、まじまじと横顔を見つめられた。
「お、俺は、俺は、牙琉検事が、好きです」
真っ直ぐと見め返す。牙琉検事は、右手で顔を半分覆った。
「おデコくん、いや、王泥喜くん」
「は、はい」
「それは、本当かい?」
向けられた瞳は辛そうな切なそうな悲痛の光を放っていた。
「はい、恋愛感情での」
ふわりと牙琉検事は優しく笑った。今にも泣きそうな、そんな切ない顔だった。
「あぁ、もうまったく、僕らしくないなぁ」
「え?」
「柄にもなく、嬉しいって思うなんて」
カァアと頬が熱くなった。あまりにも綺麗な笑い方だったから。
「僕も好きだよ、王泥喜くん。もしよかったら、付き合ってくれるかな?」
「も、もちろんです」
優しく握られた手が引かれ、体が傾くと、ちゅっと額が軽い音を立てた。
「な、な、」
「事務所まで送るよ」
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