逆転(BL)
背中合わせ(ミツナル)


「……そんな君が好きなのだ」


丸めた背中の奥で胸がギシッと痛んだ。背中合わせで伝わる温もりがじわりと心に滲んでくる。
優しい、優しすぎるよ。
だから、嬉しくて嬉しくて泣きたくなる。


「……うそつけ」


相変わらず強情の僕はそんなことしか言えない。
フッと緩い響きが背中越しから伝わった。


「嘘ならもっとまともなものをつく。はったりは君ほどではないがな」


肩を竦める動きが伝わり、スーツが軽く擦れる。

「……偉そうに」


膝に肩を埋めて、ポツリと言葉がこぼれる。ポタリと熱いものが流れた。


「…だから、泣くな」

「……泣いてない」


説得力のない鼻声で、反論する。情けなくなった。


「君の言葉を借りるなら、うそつけ、だ」

「……冗談だ」

「それは笑えないジョークだな」

「…余計なお世話だ」

「そうか、なら私は帰るとしよう」

「…え、」


背中が急に虚しく冷えた。頭の中を白いフラッシュが包み、絶望が体を硬直させた。


「冗談だ」

「…笑えない」


震える喉をなんとか動かした。冷えた指先が未だにかじかんで動かない。……部屋が、寒いのかな。


「だろうな」

「……帰るな」


精一杯の強情は、脆くも崩れ去った。背中に優しい温もりが戻る。


「言われなくとも」

「……好きだ」


指先が熱くなった。密かに置いた左手が、いつの間にか包み込むように握られていた。



「知っている」


[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!