逆転(BL)
ズルい人(ミツナル/オリキャラ登場で修羅場)

「彼から離れてください」

モデル並みの綺麗な女性が凄い形相でしかも独占欲丸出しで言ってきた。

「なら、御剣にそうと伝えてください。そして、後の判断は君に任せると言ってください。貴女が僕をライバルと言うなら、当然でしょう?」

女性の顔が一瞬怯み、みるみるうちに険しくなった。

「わかりました」

女性は出したお茶も飲まず、派手な赤いハイヒールを鳴らして事務所から出ていった。

「なるほどくん、大丈夫?御剣検事に任せちゃっていいの?」

陰で話を聞いていた真宵ちゃんが心配そうに尋ねてきた。

「うーん、さすがにそれはわからないなぁ。あの女性が伝言してくれるかも、ね」

「あの人ほんとに御剣検事のこと好きなんだね」

「でも、ただ、それだけなんだよ」

「どういうこと?」

「本当の信頼関係じゃないってことさ」

うーん、と真宵ちゃんは頭にハテナマークを浮かべて唸っていた。

「真宵ちゃんもそのうちわかる日がくるよ」

「えーっ! なるほどくんだけわかっててズルいよ」

「アハハハ 大丈夫だよ、真宵ちゃん」

そして、その日は不自然なほど、いつものように事務所を閉めた。

その晩、御剣から連絡があった。

『あの女性が急に検事局に来たよ。…成歩堂、いったいどういうことだ』

「御剣、君に判断を任せたんだよ。…はっきり言うけれど、それは君の問題だ」

重い沈黙が深く心にのし掛かる。ゆっくり息を吸って言葉を考えた。

「……御剣、僕は君のことが好きだよ。けどね、これは僕が解決することじゃない。…だから、君に任せたんだ」

『……成歩堂、スマン』

「僕の方こそ、ごめん。君に責任を押し付けるようなことをして」

『構わない。これは私の問題だからな』

そのあと2、3回言葉を交わし、眠りについた。

── 翌朝、いつものように事務所を開けると、女性がヒステリックに扉を開けた。

「どういうこと!?昨日の夜、御剣さんから連絡が有って、今後一切、私と関わらないで欲しいって!!」

「それは奇遇ですね。僕にも連絡がきましたよ。ただ、これは私の問題だ、と言っていただけです。僕は貴女について何も話してませんよ」

「なっ」

女性は驚きで言葉も出ないようだ。そして、

「…そう、御剣さんが」

「はい」

「ごめんなさいね、巻き込んだりして、私が悪かったわ」

「いえ、」

その言葉の先が出ず、悩むうちに彼女は事務所を出ていった。

「修羅場だったね、なるほどくん」

「う、うん。でも、ちょっとズルいこと言っちゃった、かな」

「え?どういうこと?」

「言っただろう?貴女について何も話してないって」

「うん、それがどうしたの?」

「でも僕は御剣と御剣について話たんだ。君の問題だから、君が解決してくれってね。……僕たちのことは君に任せたって遠回しに言ったんだよ」

「え、つまりそれって」

「そう、彼女のことをフってくれって頼んだことと同じなんだ」

「御剣検事はなんて?」

「自分のことは自分が解決するってさ」

「うーん、わかんない。どういうこと?」

頬に手を当てて真宵ちゃんが聞いた。車がスピードをあげて去っていった。

「僕と別れるつもりはないってことだよ」

「うーん!さすが、御剣検事。かっこいいなぁ」

「伊達に言葉を使う職業じゃないってことだよね」

「なるほどくんもねっ」

得意気に笑う彼女の無邪気さに頬が緩んだ。胸ポケットの携帯が軽快な音を立てた。

「もしもし、成歩堂です」

『もしもし、御剣だ。大丈夫か?成歩堂』

「うん、まぁね。ちょっとズルいこと言っちゃったけど」

『フ、ではまた今晩会おう』

「うん」

電話を切ると真宵ちゃんがニヤニヤしながらこっちを見てきた。

「今の電話、御剣検事でしょ?」

「な、なんだよ。ニヤニヤして」

「ふふふ、なるほどくん、顔が緩んでたよ」

う、と嫌な汗が滲むのを感じていると真宵ちゃんが観念したように給湯室に入っていった。

「お茶、いれてくるね」




成歩堂法律事務所の朝が始まる。



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