逆転(BL)
The bell of clock tower(ミツナル)
※時計台の鐘(天野月子)を聞きながら












アイツの眉間のヒビが思い浮かぶ。後数分で待ち合わせの時間だ。

久しぶりに会うというのに、まさかの久しぶりの仕事でギリギリ乗った電車は、洗濯物が絡んで止まった。

歩いて行けたら苦労はしない。もしその間に電車が動けば……。

気付けば、安物の時計は時間を虚しく過ぎた。

せっかく予約をしたレストランのディナーをキャンセルされるの嫌だ。

(……あぁ、もう、ダメだ)

さすがの僕でも、時間に"待った"はかけられない。

アイツはまだ、あの場所で、腕を組んで、待っているのだろうか。

赤い糸が繋がっているといわれる小指が、ジンジンと痛む。

あぁ、やっと電車が動いた。アイツはまだ、待っているのだろうか。


腕を組んで、眉間のヒビを深くしながら。


会ったらなんて言えばいいんだろう

仕事で遅れた?

電車が止まった?

どれも嘘臭くて、なんて言っても許されないか

まぁ、いいや
献血していたとでも言っておこう

走って走って着いたそこに、いつものように、腕を組み、眉間のヒビが三割増し濃いアイツがいた。

「悪い……、」



『献血してたんだ』


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