逆転(BL)
失業希望(七夕/ほのぼの/ミツナル+α)
『あっ、なるほどくん?明日事務所行くからさ、折り紙とひも用意してねっ!絶対だよっ!はみちゃんも行くから楽しみにしてねっ!御剣検事も呼ぶんだよっ!』
…そんな電話があって、日付を確認すると、今日は7月6日。つまり明日は7月7日。七夕の季節だと知った。
(…晴れるかな)
空には薄暗い雲が一面を覆い、心なしか部屋が暗いように思える。部屋に流れ込む湿った生暖かい風は、体を不快なほどにまとわりついた。
──…
翌朝。昨日の天気が嘘のように晴れ、空気はカラリと乾き、心地好い風が草木の香りを運んでいた。真宵ちゃんに頼まれた通りに、折り紙とひもを用意しておいた。
夕方をすぎるとにぎやかな声がドアの向こうで響いた。元気な足音が数人分。窓ガラスの向こうの空は、オレンジ色に染まっており、夕日が眩しかった。
「なるほどくん、久しぶりだね。はい、これ」
「お久しぶりですっ!なるほどくんっ!」
「ありがとう、久しぶり真宵ちゃん、春美ちゃん」
元気よく開いた扉から真宵ちゃんと春美ちゃんが飛び出してきた。渡されたのは立派な笹。山から採ってきたと後に言っていた。
「…久しぶりだな、成歩堂」
「御剣も久しぶり」
真宵ちゃんと春美ちゃんは、テーブルの上にある折り紙を見つけると、七夕の飾りを作りだした。
──…
「できたねっ!はみちゃん!」
「はいっ!真宵さまっ!」
僕の手の中には青い折り紙で作られた短冊とペンがあった。先程真宵ちゃんに渡されたものだ。願い事を書け、ということだろう。
(…うーん、どうしようかなぁ)
悩んでいると後ろから御剣がこっそり話しかけてきた。申し訳なさそうに小声で。
「…これはいったい何を書けばいいのだ」
「自分の願い事だけど」
「それは知っている」
「世界平和って書けばいいんじゃないかな?」
「私たちの仕事がなくなるではないか」
「それはそれで喜ばしいことだろ?」
そうだな、と御剣は優しく笑った。
『失業希望』
(星空の下、赤と青の短冊には"世界平和"と書かれた文字が並んで風に揺れていた)
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