逆転(BL)
無謀な甘い挑戦(ミツナル)
日付は2月14日。窓の外は雪が降り、周りには恋人達が仲良く手を繋いでる。仕事に終われる日々を過ぎ、愛しい人と関わることもなく帰宅することになった。すでに時計は10時を過ぎていた。
(…ム、もうこんな時間か)
郵便受けを確認するとカードと不恰好な白いリボンがかかった青い箱にがあった。メモには成歩堂の字でこう書いてあった。
"とりあえず贈ります。 成歩堂"
「…フ。らしいな」
部屋に入り、暖房をいれた。部屋着に着替え、ワインセラーからチョコレートに合うものを選び、オーディオにスイッチをいれた。
大方、真宵くんあたりにそそのかされたのだろう。箱を開けると彼らしい歪な生チョコレートが入っていた。どうやら手作りらしい。
「真宵くんに感謝しなければな」
チョコレートとワインの組み合わせを楽しんでいると、携帯が震えた。
「…御剣だ。ム、成歩堂か」
『夜遅くに悪いな。こ、声が聞きたくて…』
「フ、慣れないことはするものではないな」
『…う。わ、悪い』
「謝ることはない。私のためにしたことだからな」
『なんだそれ。…御剣らしいけど』
「成歩堂、チョコレートをありがとう。今美味しくいただいてるところだ」
『そ、そうか、ならいいんだ』
「チョコレートの感想を聞きたかったのだろう?」
う、と受話器の向こうからでもわかる彼特有の図星のときにあげる声だ。
「お返しは今度しよう。3月15日は開けてくれ」
『お、お返しはいいよ。僕があげたかっただけだからさ』
「借りは返す主義だ、と言ったら?」
『……期待せずに待つよ、御剣』
「では、期待に添えるとしよう」
じゃあ、と電話を切ろうとする成歩堂を呼び止めた。
『御剣?』
「…何か言って欲しいことはないか?」
『とくにないけど…あ!』
「なんだ?」
『…おやすみ、れ、怜侍』
「慣れないことはするものではないな。……おやすみ、龍一」
通話終了ボタンを押すと、恋人が顔赤くして頭を抱える様子が容易に想像することができた。
「…私も慣れないことをするものではないな」
少し熱を持った頬を冷やすように、グラスに少し残ったワインを煽り、箱を冷蔵庫にしまった。
そのまま、遅い夕飯を作りにキッチンへ向かった。
御剣の部屋のインターホンがなるまであと少し。
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