JOJO
君は眠る、(承花っぽい承+ 花)※花京院追悼文
花京院の両親に、花京院の身に起きたこと説明するために、SPR財団の人と共に花京院の実家に承太郎とジョセフは向かった。しかし、息子の死因は、吸血鬼に時を止められている間に致命傷を負わされたのです、とはさすがに報告できず、SPR財団が繕った話で通すことになった。承太郎は、小高い丘の木の根元近くに作られた花京院の墓を見下ろしていた。

『典明…』

花京院の母親の、声と心の声が重なった。

──…
SPR財団の団員による説明が終わると、花京院の母親は静かに涙を流した。…遺体の埋葬はすぐに行われたため、花京院の両親は花京院の顔をはっきりとは見ていない。

「典明は、典明の最後はどんな感じでしたか?」

「……とても穏やかな顔をしてました」

「…そう、ですか。あの子は、きっと私たちに、さよならを言えなかったことに悔いているんでしょうね、」

…優しい、子でしたから、と疲れた様子で、花京院の母親は微笑んでいた。

「両親である私たちでも典明は、どこか一線を引いたような態度でした。…でも、きっと何か変わったんでしょうね」

──…

(『…貴方たちと出会って』か)

ザアァ…と草木が揺れ、髪が静かに上下した。

「…優しい、子だってよ。なのに、てめぇは、

母親を、

親を泣かせてんじゃねぇよ」

さきほどより、強い風が吹き目元の滴をどこかへ運んだ。承太郎は、風で帽子が飛ばないように帽子のつばをおさえた。

俺がもう少し、強ければ、と。何度も頭の中で反芻されていた。


「…っく」


震える肺を抑えながら、深く息を吸い、静かに吐き出した。

「…っ、馬鹿野郎…!」

その言葉は、自分に対するものに思えた。

──…

「ねぇ、承太郎は魂とか輪廻転成とか信じる?」

「どうだろうな。実際に俺たちは吸血鬼やスタンドなんていうものに遭遇しているからな」

「この数十日で色々なことが起きてるからね」

「…まぁ、ないだろうな」

「僕は、あったらいいなって思うよ。いいことも悪いことも全部抱えなきゃいけないけど、」

──…

『悔いがないように、過ごせるじゃないか』

「…やれやれだぜ」

承太郎の右手に握られた白い百合の花が、軽く揺れた。それが、風なのか承太郎の身体の震えからなのかは、定かではない。白い百合の花は、承太郎の体温で少し萎れ、花弁が重いというように項垂れていた。その姿は、承太郎の後ろ姿と重なる。

「悔いは残してねぇだろうな」

花京院が眠る土の上に、承太郎は花を供えた。一層強い風が承太郎を襲う。風に煽られて、花が少し転がった。

(…あぁ、お前は本当に、)

一瞬強く風に乗って、季節外れの香りが薫った。気のせいだと思えるほど一瞬だった。承太郎は気づいた。それが、たとえ他人から言わせれば、非現実的で無意味で非科学的なものだとしても。

「…優しい奴だ」

花京院が承太郎の問いに返答をしたような風が吹いていた。穏やかで、優しく緩やかな風が。


君は眠る。
いつまでも止まない優しい風が吹き続ける丘の上で。



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