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小説
小さな足音 拍手御礼SS 6








小さな足音 拍手御礼SS 6

20110325〜0513






「咲良、見えるか?あそこにある一番明るく光っている星が、おおいぬ座の、シリウス。この冬空で一番明るいお星様だよ。」

寒空の中、咲良と洸輔は幾重にも重ね着をしたモコモコの姿でテラスに出て、夜空に輝く星を見ていた。

今宵は雲一つなく、車や人の喧騒もない。

キーンと張り詰めた空気と凍てつく寒さが二人の身体を包み吐く息は白く、冷たい空気に晒された二人の鼻の頭が赤くなっていた。

洸輔に抱えられた咲良は、寒さなど感じないのか興奮した様子で夜空に輝く星を指差す洸輔を真似て星を指差している。

 「わんわん?しりゅーす?あのいちばんピカピカのお星さま、わんわんのお星さまなの?」

 「あー、そうだな。お星様が犬の絵を描いているんだ。あの一番明るいピカピカのお星様が犬のお鼻の部分なんだ。」

洸輔の答えに、咲良はニマニマ笑うと、

 「お星さまのお絵かきじょーずじゃないですね。さくらのがじょーず!!

嬉しそうに咲良は得意気に胸を張っている。

 「そうだな、咲良の絵は上手だな。でもお星様は何万年も前から皆に分かってもらうように光ってるんだよ。」

洸輔は咲良に、冬の夜空に輝く「冬の大三角形」を教えようとしたのだが、まだ少し早かったか…と思った。

 「パパ、お星さまひかってるのきれいね……」

ハフゥと白い息を吐きながら咲良が星空を見上げる。

しかし暫くするとギュッと目をつぶり洸輔の首に顔を埋めた。

 「どうした?咲良?」

洸輔が尋ねるも咲良はフルフルと首を振る。

 「……パパ、こわい……」

 「ん?何が怖いんだ?」

咲良の言葉に洸輔は不思議そうに声を掛けるも、咲良は首を振るだけで答えようとしない。

洸輔は咲良が何に怖がっているのか分からず困惑したが、咲良を抱く腕に力を込め、ギュッと抱きしめた。

すると…

――カラカラ…

窓を開ける音がすると知春が顔を覗かせた。

 「うわっ、寒ぃー!!洸輔、咲良、こんなに寒いのに何してんの?」

知春が両腕を摩りながら二人の側に近寄る。

 「知春…いや、咲良にオリオン座を教えていたんだが、まだ早かったみたいだ。」

苦笑する洸輔に知春はクスクス笑う。

 「あー、確かにまだ咲良には分かんないかも。あれ、咲良寝ちゃったの?それなら部屋に入らないと。」

まだ洸輔の首元にかじりついている咲良の背中を知春は優しくぽんぽんと叩いた。

 「いや、寝てはいないが…星を楽しそうに見ていたのに急に何か怖がってしまってな。」

困惑した様子の洸輔に知春はキョトンとしたが、暫くして「ああ…」と納得した様子で咲良の頭を撫でた。

 「ふふっ、咲良おいで。心配しなくても咲良だけじゃない。洸輔も俺も咲良の側に居るよ。」

その言葉に咲良は知春に手を伸ばし抱き着いた。

 「まー…、まー!!」

知春の名を呼び必死に抱き着く咲良に知春は声を掛け続けた。

 「大丈夫。咲良は独りぼっちじゃないよ。ほら、咲良ぎゅー。」

知春は口でぎゅーと云いながら咲良をギューギューと抱きしめた。

 「知春?咲良は何を怖がっているんだ?」

 「ふふっ、咲良はこの張り詰めた空気が怖いんだよ。時間が止まって自分しか居ない様な感じがするんだよ。俺も小さい時そう感じて優兄にしがみ付いてたもん。」

クスクス笑う知春に洸輔は首を傾げ、

 「…そうなのか?うーん、時間が止まってるか……さっぱり分からん。」

 「洸輔は情緒ってもんがないんだから…咲良と俺はデリケートなんだよ。なぁ、咲良。」

漸く顔を上げた咲良は、知春の楽しそうな声を聞き、

 「ねー、さくらとまーは、でいけーとですねーぇ。」

と、知春の言葉を真似て二人顔を見合わすとクスクス笑った。

 「そうか、ではデリケートな君達にこの寒さは堪えるだろうから、私の懐に入ることを許可しよう。」

洸輔はクスクス笑う二人に仰々しく云いながら手を広げた。

そんな洸輔に二人は顔を見合わせ、

 「咲良どうする?洸輔が抱っこさせてほしいって。」

 「うーん、どうしますか?」

と、首を傾げたので洸輔は慌てると、

 「いやいや、お二方。お願いしますから是非とも私の懐に入って下さい。」

 「…だって、咲良。仕方がないから入ったげる?」

 「しょーがないですねぇ。よいですよ!!」

うきゃうきゃ!!と笑いながら二人が洸輔の腕の中に飛び込むと、洸輔はコートを広げ二人を包み込んだ。

 「暖かいねー!!」

 「ねぇー!!」

ホクホクと幸せそうに笑う二人に洸輔は目を細める。

寒空の下、当たり前の様に愛しい二つの温もりを抱きしめられる事に、洸輔はそっと感謝の念を込め瞳を閉じた。



End





寒空の下、張り詰めた空気はどうしてもチキンハートな管理人は小さな恐怖心を呼び起こされます。
張り詰めた空気は好きだけど苦手ですf^_^;

管理人、星空で唯一分かるのがオリオン座と冬の大三角形だけですorz……


拍手ありがとうございました★

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