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小説
小さな足音 拍手御礼SS 4







小さな足音 拍手御礼SS 4

20100913〜20101125



「パパちらい!!」

プイッと咲良が洸輔の抱っこしようとした手を拒否し顔を背けた。

その言葉と拒否にあった手をそのままに洸輔の顔が固まった。

「…さ…咲良…」

かろうじて動いた口に咲良の名を呟くが、尚も咲良は洸輔をどん底に落とし入れる言葉を重ねた。

「パパちらい!!しゃくら、パパやなの!!」

その言葉を最後に咲良はタタタと足音を響かせ洸輔の前から去って行き、その様子を眺めていた知春の足元にしがみついた。

完全に固まった洸輔をチラリと伺いつつ知春の足元に隠れた咲良はグリグリと額を知春の足に押し付けた。

知春はそのやり取りに笑ってはいけないと思いつつ固まった洸輔を見て必死に笑いを堪えた。

洸輔はこの世の終わりが来た様な表情で、ぶつぶつと「咲良に…パパ嫌い……」繰り返し呟いている。

咲良は時折チラチラと洸輔を伺い見ると必死に知春の服を引っ張った。

「……まー……」

不安な表情を浮かべ知春に助けを求めるかの様に腕を伸ばす。

知春は咲良を抱き上げるとすぐに咲良は知春の首に腕を回しギュッと抱き着き顔を埋めた。

洸輔はまだ固まっている。

知春は必死に笑いを堪えながら洸輔に声を掛けた。

「洸輔早く行かないと患者さん待ってるよ。」

声を掛けたものの返事もなく動かない洸輔を咲良が心配そうにチラチラと伺う。

今日は洸輔の仕事が休みで暑いからプールに行く予定だったのだが、病院からの呼び出しで急遽洸輔は出勤となった。

家の庭先にある小さなプールではなく、滑り台や波が押し寄せる大きなプールに行けると咲良は大喜びしていたのだ。

楽しみにしていたプールが洸輔の出勤により行けなくなった事に酷くショックを受けた咲良は慰める洸輔に冒頭の爆弾を投下した。

「咲良、咲良が父ちゃん嫌い!!って云ったから父ちゃん苦しそうだぞ。」

洸輔の顔を伺っている咲良に知春は悲しそうな声色で話し掛けた。

「まー、パパくうしいの?」

そう云う咲良の目に涙が溜まっている。

「咲良の父ちゃんは体が痛くて苦しくて大変な思いをしている人を元気にするお仕事なんだ。だから咲良が父ちゃんに元気のパワーを上げないといくら名医の父ちゃんでも困ってる人を助けれなくなるかもしれないよ。咲良はそれでもいいの?」

知春の言葉に咲良は慌てて首を振った。

「めーなの!!しゃくらのパパはいちばのめーいなの!!しゃくらのあげる!!パパにしゃくらのげんちあげゆの!!!!」

必死に言い募る咲良は半ベソになりながら訴える。

「じゃあ咲良のパワーと母ちゃんのパワーを父ちゃんに分けたげようぜ!!」

「あい!!」

知春に下ろされた咲良は一目散に固まったままの洸輔の足元に抱き着いた。

「パパ!!しゃくらパパしゅき!!ちらいってごめんなしゃい!!!パパにしゃくらのげんちあげゆから!!パパめーいになりゅのー!!!!」

必死に言い募る咲良だが大泣きしながらの姿は駄々を捏ねている様にしか見えない。

知春は「ぷっ…」と吹き出しそうになった口を慌てて押さえた。

固まっていた洸輔は咲良の言葉に一瞬にしてやに下がった表情になりガバッと咲良に抱き着いた。

「咲良!!パパ咲良のパワーいっぱい貰った!!パパお仕事頑張ってくるからな!!」

うりうりと頬を咲良に擦り付け洸輔は感動していた。

「あい!!しゃくらのパパめーいでしゅ!!」

ウキャーと咲良は楽しそうに笑い洸輔に抱き着く。

洸輔は咲良の顔中にキスをすると知春に咲良を渡した。

「じゃあ行ってくる。済まない、せっかくの休みだったのに。後で連絡入れるよ。」

「大丈夫、洸輔の仕事は患者さんを助ける名医だからな。なー、咲良。」

「あい!!しゃくらのだいしゅきなパパはめーいです!!いたいいたいのとんできます!!!」

「咲良!!パパも咲良が大好きだ!!!」

再び洸輔が咲良を知春の腕から奪い取りうりうりと頬を擦り付けた。

知春は呆れて洸輔のから咲良を取り返すと、洸輔がまた咲良に手を伸ばそうとしたので知春はその手が咲良に届く前に、

「洸輔、早く行かないと患者さんが待ってるってば!!」

と、釘を刺した。

洸輔は名残惜しそうに渋々玄関から出ていく。

知春は咲良と共に洸輔の見送りをする。

「「行ってらっしゃーい」」

二人の可愛らしい見送りに洸輔は手を挙げ急々と家を後にした。

「パパ、めーいさんできゆかなぁ?」

「咲良のパワーいっぱい上げただろ、父ちゃん凄いんだぜ!!」

知春の言葉に咲良は嬉しそうに笑った。



小川家の日常は単純だと思われます…。





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あきゅろす。
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