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小説
LittleFairy6 小さな足音番外編







LittleFairy6 小さな足音番外編





恵斗は顔を俯かせ暫く躊躇したが、勢いよく顔を上げるとニッコリと笑いながら聡志に歩み寄り、聡志の膝を跨ぐと両腕を首に回し抱き着いた。

聡志の肩が小刻みに揺れる。

「何…だよ…」

恵斗は顔が見えないように聡志の首に顔を埋めぶっきらぼうに答える。

抱き着いた恵斗の背を抱きしめながら聡志はクスクス笑い、

「いや、どうかしたのか…と思って…」

少し間は空いたが素直に抱き着いたのがよかったのか聡志の雰囲気が柔らかくなった事に恵斗は小さく安堵の息をついた。

恵斗は聡志の首に顔を埋めながらさっきはちゃんと笑えていただろうか…と不安になる。

聡志は恵斗の背を優しく撫でるが恵斗の表情は強張ったままだった。

「恵斗、何かあったのか?」

優しく聡志が尋ねる。

恵斗はその問いにどう答えればいいのか戸惑うも何があったのかどうかなど答えれるハズもなく、聡志に抱き着いたまま静かに、


…嗤った。


「……レポート、追試になったんだよ。折角夜通し頑張ったのに……だから拗ねてんの!!!」

スラスラと恵斗の口から偽りの言葉が出ていく。

聡志は恵斗の表情が見えずギュウギュウ抱き着く恵斗の行動からよほど腹に据えかねているのかと思いクスクスと笑ってしまった。

「恵斗、来週は車で何処か好きなトコに連れてってあげるから機嫌治して、レポートはもう一回頑張ってみなさい。」

その言葉に恵斗は心の中で安堵の溜息を着くと、聡志の唇にキスを落とし、聡志の鼻に自分の鼻を擦り合わせ満開の笑みを浮かべた。

「……やった!!次約束破ったら絶交するからな!!!!」

今浮かべた笑みは上手くいったハズだと恵斗は安心した。



その日は聡志に抱きしめられ恵斗は一睡もする事なく一夜を過ごした。





翌日早朝に出勤した聡志を寝ぼけた様子を装い送り出した恵斗は大学に行かず何も思う事もなく部屋に佇んで居た。

そしてバイトに行く時間になると財布と携帯だけを手に取り上着を羽織ると部屋を後にした…。


それから一週間恵斗の体調はあまり回復する事なく自分の体を騙し込めいつもと変わらぬ生活を過ごした。

聡志とのドライブの約束は、前日に聡志の福岡へ一週間の出張が決まり叶う事もなかった。





「田辺恵斗さん、第三診察室へどうぞ。」

看護師の言葉に恵斗は返事を返すと第三診察室と書かれたプレートがある扉を開いた。

「よろしくお願いします。」

どうぞと医師から進められた椅子に座り恵斗は柔和な笑みを浮かべている医師に挨拶をした。

「担当医のかすかべです。今日はどうされましたか?」

医師の胸にあるプレートには春日部とあり、まだ若そうな雰囲気だが柔和な笑みを浮かべた表情はこちら側の人間には安心感を与えていた。

恵斗は最近の自分の体調についてあらかた説明した。

春日部はカルテに記入しつつ恵斗に症状等質問をした。

「それでは田辺さん。血液検査と尿検査、腹部エコーの検査をしますね。少しお時間を頂きますがその結果で胃カメラをするかどうか決めましょう。」





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