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小説
LittleFairy5 小さな足音番外編







LittleFairy5 小さな足音番外編




恵斗は沈む意識の中で「今日のバイトサボりに…な…」と思い意識を手放した。





「……と、…いと、恵斗!!」

眠る恵斗を揺さ振り覚醒を促す声がする。

心配そうに恵斗の寝顔を伺い尚も恵斗の覚醒を促す。

「恵斗、恵斗。起きなさい。」

その声に導かれ恵斗の意識が浮上する。

「……さ…とし?」

まだはっきりとしない意識の中無意識に暖かい温もりがする方へ擦り寄る。

全身に安堵感が降り注ぎ絶対的な温もりに包まれ力が抜ける。

「恵斗どうした?大丈夫か?」

優しい問い掛けに甘えるように温もりに頭を擦り付けると、コクン…と頷く。

フゥ…と密やかな溜息が耳元を擽り首を竦める。

恵斗は、唐突に意識が浮上し傍らに人の気配を感じた。

「…聡志?…えっ…何でここに?仕事は?」

瞳を瞬かせ傍らの気配に問い掛けた。

恵斗の負担にならないよう抱きしめていた聡志は寝起きで頭の回っていない恵斗に優しく口付けを繰り返す。

「ん?恵斗どうしたんだ?こんな時間から寝ているのは珍しい。バイトはどうした?」

吐息と共に矢継ぎ早に質問されるも大人しく口付けを甘受していた恵斗は、ビクッと身体を強張らせた。

「さ…とし?ど、どうしてここに?あ…あ、うん。今日バイト…ない、んだ。昨日DV……れ、レポートしてたから、眠く、て…」

スラスラと無意識に口が動く。

「そうか…今日も携帯が繋がらなかったから心配した。具合が悪そうだ。熱があるのか?」

熱を確かめるために聡志は恵斗の顔を引き寄せ様とするが…

「だ、大丈夫!!熱ないよ!!寝てたから。あっ、もうこんな時間なんだ!!よく寝たなぁ。聡志何か飲む?」

聡志の腕の中から素早く身を翻し台所のシンクへ駆け寄る。

震える手を何とか押さえ込みヤカンに火をかける。

ガサガサと忙しなく動き回り聡志の顔を見る余裕もなく滑らかに口も無意識に音を発する。

「聡志、どうしたの?仕事は?今日は残業じゃなかったんだ。急に居たからビックリした。俺、今日はレポート提出して賢吾達とご飯食べたんだ。っても学食だけど。相変わらず賢吾小さいのに大喰らいでさ…んで…」

「恵斗…」

聡志から声が掛かるも恵斗の声は止まらず…

「賢吾の奴朝から大盛りの…」

「恵斗!!」

強めな口調で名を呼ばれ恵斗はビクッと身体を強張らせ動きと口が止まる。

「恵斗、こっちに来なさい。」

幾分口調を和らげた聡志が恵斗を呼ぶ。

その声に導かれるように意識は聡志に向かうが身体が、足が動かない。

恵斗は内心驚愕するも表情には出ずシンクに向いたまま固まってしまった。

「恵斗、おいで…」

再び聡志の声がするも身体が動かず辛うじて顔が聡志の方へ向いた。

聡志は微笑み両手を広げ恵斗が来るのを待っていた。





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