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小説
小さな足音 9







小さな足音 9





数日後知春はどうしても恵斗の事が気になり体調の安定した日にレポートの資料探しも兼ね大学へ向かった。

知春は出産のため大学を休学しているが、担当教授の計らいにより休学中に規定のレポートを提出すれば最低限の単位が取得でき、皆と一緒に上の学年に上がれることが出来る事になっていた。

そのため体調の良い日には授業には出れないが大学へ散歩がてら出掛けていた。

洸輔も朝に知春の体調チェックを行い行き帰りは車で一緒に移動する事と校内では必ず友人と行動する事を条件に知春の外出を認めていた。

知春は過保護過ぎるとむくれたが恵斗、賢吾、将親の三人共知春の事が心配なため大学に知春が来る日は皆で連絡を取り合い必ず誰か一人は側に居るようにした。

「とーもー!!お待たせ!!ちみっ子の様子はどないや?」

走り寄ってきた賢吾は知春のお腹に顔を寄せ「ちみっ子寝てんのか?」と話し掛けた。

「うん、今は大人しくしてる。さっきまでは暴れまくってたけど。賢吾…恵斗来てる?」

「恵斗最近来てへんねん。連絡はくれんねんけど何やバイトが忙しいみたいで暫く大学来られへんとか云うてた…」

心配そうな顔をした賢吾は何か思い詰めた様子で、

「なぁ知春…恵斗何かあったんやろか。将親にも何も云うてへんみたいやし…相談してくれへんのて俺らの事信用でけへんのやろか…」

「賢吾…恵斗はそんな奴じゃないよ…」

知春は落ち込んだ賢吾に声を掛ける。

俯いた賢吾の背中が細かく震えている。

「けん…」

「あーもう!!うじうじ考えんのん性に合わんわ!!!知春!!」

突然叫んだ賢吾がガバッと顔を上げ知春に詰め寄った。

「うっ、えっ…な、何?」

知春は突然詰め寄られビクッと肩を竦めた。

「知春、今から恵斗んトコ行くで!!何に悩んでんのか絶対聞いたん、いだっ!!」

最後まで言い終わる前に後ろから音もなく近付いてきた大柄な男に賢吾は頭を叩かれた。

「将親!!」
「チカちゃん!!」


知春と賢吾は二人して驚愕すると、ハッとした賢吾は「何すんねん!!」と将親に詰め寄った。

将親は呆れた顔をしつつ二人の頭をポンポンと叩き、

「賢吾。恵斗を心配するのはいいが身重の知春を巻き込むな。知春も恵斗の事が心配なのは分かるが今は子供の事を優先的に考えろ。」

諭す様に将親は二人に云い含める。

二人は将親の顔を見つめるとシュンとなるも「「でも…」」と呟き

「「恵斗が心配(やねん)!!」」

二人に詰め寄られ将親は落ち着け!!とばかりに二人の背中をポンポン叩いた。

「二人共落ち着け、知春あんまり興奮するな。ほら、二人共こっちに座れ。」

側にあるベンチに二人を誘導し知春には手を差し延べる。

将親はベンチに座った二人の前にしゃがみ込むと項垂れている二人の頭をポンポンと叩き

「二人共、恵斗が心配な気持ちは分かる。けど恵斗も今は混乱してて気持ちの整理が付いてないんじゃないか?恵斗の気持ちが落ち着くのを待ってやるのもいいと思う。」

なっ、と暗い雰囲気の二人将親は明るく励ます。

「賢吾、そうだよ!!恵斗も何かあったとしても気持ちの整理が付いたら話してくれるって!!それに河原さんも居るんだから大丈夫だって!!」

「知春……そうやな!!恵斗には河原さん居てはるし気持ちの整理が付いたら話して……って河原さん絡みやったらどないしよ!!!恵斗、河原さんの事めっちゃ好きやしそれが悩みなんちゃうやろか!!チカちゃんほんま何か聞いてへんの!!」

詰め寄る賢吾に将親は溜息を付き再び「落ち着け…賢吾…」と口にした。





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