小説
小さな足音 6
小さな足音 6
「知、最近親父達と連絡したか?」
「ううん、お父さん達と話したの一ヶ月前位だよ…ってまさか!!」
知春の驚愕に洸輔は苦笑し諒は額を抑えた。
「あー、知で一ヶ月前っつー事は暫く連絡は無理だな…」
「相変わらず熱々の御両親みたいだな。」
「もう!!これじゃ報告出来ないよ…」
知春達の両親は知春が高校を卒業した後洸輔と一緒に住み始めたのを機に新婚時代の再来と嬉々として夫婦二人で海外を飛び回るように旅行を始めたのだ。
元々子供達も目を覆うようなラブラブっぷりな夫婦は二人だけの世界に入り込むのかなかなか連絡を取ることが難しくなる。
初めの内は一番下の知春には度々連絡をしている様子だったが最近は嫁に出した先の洸輔に任せっきりのようだ。
彼等は小さい時より知春を知る洸輔に絶大な信頼を寄せており洸輔もその期待に応えている。
「帰国されたらすぐに知らせればいいだろう。優(すぐる)と彰(あきら)には連絡しないとな。」
「うん、優兄も彰兄もビックリするだろうな。」
照れた様に笑う知春に諒は肩を竦め「ビックリも何も漸くって感じだな。」と答えた。
その後、知春は再び洸輔に抱きかかえられ車まで運ばれ家路に着いた。
諒の「ここでイチャ付くなよ。」との言葉とニヤニヤ笑いに見送られ…
そして家に着くなり洸輔にベットまで運ばれ布団に包み込まれた。
「洸輔!!病気じゃないんだし大丈夫だよ…」
ベットの横で着替えをしている洸輔に向かい不満げに訴えた。
眼鏡をサイドテーブルに置き知春の隣に潜り込む。
腕の中に抱き込むと知春はゴソゴソとベストポジションを探しすっぽり収まると洸輔の上腕に額を擦り付た。
「洸輔?」
何も云わない洸輔の顔を見上げると目を閉じていた。
洸輔は暫く腕の中の知春の感触を堪能し口を開いた。
「医師としての頭では分かっているんだが…気持ちの方が落ち着かなくてな…」
云い澱む洸輔に知春はムッとした顔をした。
「それって…洸輔、俺の事信用してないって事?」
知春の尖った唇に洸輔はチュッと宥めるキスをしつつ、自分でもよく分からない気持ちを伝えた。
「そうじゃない、信用するしないではなく頭ではシュミレーション出来るんだが気持ちが先走っているような…」
洸輔の言葉を聞くと知春は目を丸くしてクスクス笑い始めた。
そして自分のお腹を優しく摩り話し掛けた。
「おーい、お前の父ちゃんテンパってんぞ!!顔変わんないけど確実にテンパってる!!初めて父親になるからかなぁ」
クスクス笑い声がとまる事なく自分のお腹に喋りかける知春を見て洸輔は溜息をついた。
「知春、情操教育に悪いからテンパるとか聞かせるな。せめて緊張しているとかにしなさい」
真面目な顔をした洸輔が注意する。
一瞬目を丸くした知春はプッと吹き出した。
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