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小説
小さな足音 5







小さな足音 5





「えっ…3ヶ月?…おめでとう?…何が…な…こ、洸輔っ!!洸輔ぇ!!」

知春は何が何だか分からず洸輔の名を呼び救いを求めるように両手を伸ばす。

洸輔はすぐに差し出される手を掴み覆いかぶさる様に知春を抱きしめた。

その温もりに安堵の息を漏らすと知春は洸輔の首筋に頭を擦り付けた。

「知春ありがとう…」

耳元で掠れた洸輔の声が聞こえた。

もう一度ギュッと強く知春を抱きしめ顔を上げた洸輔は互いの額を合わせた。

「知春、私達の小さな命が宿ったんだよ。」

嬉しさからか滅多にない満開の笑みを浮かべた洸輔は噛み締める様に知春に囁いた。

「新しい命?」

「そうだ、私達の子供を授かったんだ。」

「子供…って、赤ちゃん!!洸輔と俺の子供が出来たの!!!」

漸く理解出来たのか知春は驚愕した顔が一瞬にしてクシャっと歪み、瞳から大粒の涙が溢れ出した。

「うえっ…洸輔、赤ちゃん…出来っ…嬉し…嬉しいよー、こう…けぇぇぇ!!!」

ワァァァと泣き出した知春を抱きしめ背中をさする。

「知春ありがとう、ありがとう…」

洸輔は泣き崩れる知春に囁き続けた。





「もしもーし、お取り込み中申し訳ないのですが…そろそろ説明に移ってもいいデスカ…」

今だ互いに喜びを噛み締め抱き合う二人に諒から遠慮気味な声が掛かった。

ハッと知春が我に返ると慌てて洸輔から離れる。

ゴシゴシと目を擦れば洸輔がその手を取り「赤くなるから擦るな」と云い唇を寄せた。

「小川先生が居るから大丈夫だと思うがお前は女性より子宮の機能が万全とは言い難いから安定期に入るまで悪阻が酷いと思う。だが栄養は二人分必要だから食べれるときにしっかり食え。それと激しい運動も禁止だ。誘われてもお断りしろ。」

諒の言葉を真剣に聞いていた二人だが最後の一言に洸輔は憮然とし、知春は顔を真っ赤にして「諒兄!!」と叫んだ。

「まぁ、それは小川先生にお願いして…あと知、体調に少しでもおかしな所があれば必ずすぐに小川先生か俺に云うんだぞ。お前は我慢強いからな。だが今はお前だけじゃなく子供が居ることを忘れるな。知だけじゃなく子供にも影響があるからな。」

医師の顔をした諒が知春に諭し聞かせる。

「諒兄…分かった。うん、俺だけじゃない。ここに洸輔との命を宿してるんだからちゃんと云うよ。」

知春は両手をお腹に当てると強い眼差しで諒を見つめた。

すると二人の会話を聞いていた洸輔も優しく知春の手に自分の手を重ねた。

「知春、大丈夫だ。二人で見守っていこう。私達だけでなく諒も皆居る。心配することはない。」

「うん…ちょっとビックリしたけど洸輔との子供だもん。この子もきっと元気に成長するよ。」

「確かに小川先生に似てたら腹ん中から医学用語がばんばん聞こえてきそうだな。」

うひゃひゃと奇妙な笑い声を出すと諒は「そう云えば…」と呟いた。





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あきゅろす。
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