a la carte たまには 2 顔を上れば、竜の右目さん――片倉さんが渋い顔で私を見下ろしていた。 「あ、片倉さん、おはようございます―…ぉっと、と」 通行の邪魔にならないよう端によろうとしたら、足がもたついてよろけてしまった。 だけど、転ぶ、と思ったのに、次の瞬間には腕を引き上げられて片倉さんに支えられていた。 「す、みません…ありがとうございます」 「いや。大丈夫か?」 片倉さんに答えるようにしてうなずく。 顔、赤くなってたりはしないかな。なんか暑くなってきた。 私、結構な重さあると思うんだけど。片倉さんはひょいっと私を持ち上げるようにしてたから、自分が今、すごく軽い子になったみたいだった…! 「暁?」 気恥ずかしさとちょっとした感激に浸っていたら、片倉さんに名前を呼ばれた。 「はいっ」 「お前、今日は休みじゃなかったのか?」 「? 休みですよ?」 こっちにきて働くようになってから、週1で休みをもらっている。 「だったらなんで廊下の掃除なんか…」 「普通の日だと広い敷地内の掃除だけでくたくたなんです。」 便利な文明の利器に囲まれていた私には、圧倒的に体力が足りない。みんながこなす仕事量の半分いけばいいほうだから、呆れながらも笑っていつも手伝ってくれる仲間には、嬉しい以上にホント申し訳なくて。 「だから少しですけど、私なりの気持ちで…掃除です」 私がそういうと、片倉さんは珍しく困ったように眉根を寄せる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |