a la carte 私と真田さん1(真×主) 「………ひ、ゃ…っ」 ぞわりと全身の毛が逆立った気がした。 「破廉恥でござる暁どの」 右後方から咎めるように声をかけたのは、私がお世話になっている住み込み先の主、真田さんだ。 「――真田さん。破廉恥なのはあなたのほうですっ」 睨みつける私に、真田さんはわからないというような表情で「暁どのが悪いのだ」と今度は腰を引き寄せて腕の中へ閉じ込める。 何で私が悪いのよ。おかしくない? 「私は今着替えてるところなんですけど?」 刺々しい口調になっても仕方がない。だってここは私の部屋であり、私は自分の部屋で着替えているだけなのだから、誰かに迷惑をかけてるわけじゃない。 ――この人と違って。 「気配を消して、勝手にひとの部屋に入って来るのは許されるんですか? しかも、脇腹舐めるなんて! どうみても悪いのは真田さんでしょ!?」 言い掛かりにもほどがある。私は被害者でしょーがっ。 きっと私が猫ならば、尻尾を膨らませてフーフーと威嚇してることだろう。 なのに。 真田さんは。 「暁どの…」 と、私の耳元で囁く。 「なまめかしい柔肌からの香りで某を呼び寄せるのは……」 破廉恥以外なんと呼べばよろしいのか、と首筋に強く唇を押し当ててきた―…! し、しぬ……。 私…いつか心臓発作で死ぬよ、きっと。 [*前へ][次へ#] [戻る] |