a la carte
雨の日5
「わたし、友達にも考えなしだって、よく言われてるのに…ホントに、ゴメン」
わお。わたしってマジで情けない。声が震えないように、意識する。お願い藤真、気付かないで。
「暁?」
顔を覗き込もうとする藤真から顔を背け、明るく取り繕う。
「考えて話さなくっちゃね〜! 友達なくしたくないし! …えっと…じゃあ、ね?」
藤真の顔が見れなくていたたまれない。自分が悪いんだけど、早くここから離れたい。
なのに。
体が何かにぶつかったと思ったら、いつの間にか藤真の腕の中にいた。
思わず見上げたら目から涙がほろりと落ちる。
や、やばい…。
急いで涙を拭おうとしたのに、全然体が動かない。涙で潤む視界に焦りつつ、離れてほしいと訴えるために藤真の名前を呼ぶ。
「…藤、真……っ」
離して、と続くはずの言葉は、近づいてくる藤真の影に遮られる。
え?
ええ?
ええぇ!?
ちょっと、ちょっとっ、
ちょっとおぉーっっ!!!
どどどどど、な、てん、の。い、マ、藤っ…真が! メの、目の、前に、いまスが!
完璧に固まったわたしの耳に、ちゅ、と音が聞こえた。
「すっげえ顔」
ほんの十センチくらい顔を引いた藤真が小さく笑う。
笑い声はないけど、いつもの、あのキラキラした目が今は細められてて、藤真が笑っているんだとわかる。
何でそんなに嬉しそうなの?
て、いうか。
「いきなりっ、なにすんのーっ!!」
わたしは藤真の足を蹴って、藤真から離れた。
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