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a la carte
雨の日3



「ぅおおおう!?」
 驚いて手を引くと、呆気なくあたしの手は藤真の手から離れた。
 び、っくり…した。
「なんだよ、花形〜。せっかく堪能してたのに」
「たっ…たんのーって…藤真っ?」
 目を見開くあたしに向かって、藤真はにんまりとする。
「顔、赤い」
「っ!」
 な、な、な…!
「いつも口では適当にあしらわれてるけど、そうか〜、暁には直接行動で示したほうがよかったんだな〜」
「は?」
 誰があしらうって?
 固まるあたしの肩に、花形が手を置いた。振り仰いで無言の意味を尋ねるあたし。
 なのに。花形は。
「諦めろ」
 と首を振った。
 なにを?
 なにをよ、ねぇ、花形。
「とにかく。これ以上藤真の顔が緩むと後輩(した)に示しがつかないから、話はまた後で藤真としてくれ」
「後で? …えっと、ううん?いいよ後でじゃなくても。直接図書室に本を返してくれれば。ごめんね、練習中に」
 周囲を見渡せば、いつの間にかみんなの視線の的だ。
「いや、本のことじゃなくて。あ。待てよ。…本といえば、もしかしたら前に藤真がうちに置き忘れていったやつじゃないか? 夏休みの宿題の、読書感想文がどうとか」
「あぁ〜ン? 知るか、んなこと。ったく、花形のくせに人の恋路を邪魔していいのかよ」
 〜のくせに、の響きはもろ某人気テレビアニメ『○ラ○もん』の登場人物の口調だ。
「悪い。でも公衆の面前でお前が犯罪を犯すのを黙って見てられないだろう?」
 犯罪? 藤真が?
「阿呆。いくら俺でも途中で止まれるっつーの。……多分」
「そう願うよ。けど、今は突っ走りそうだったから、止めたんだ」
 よくわからないけど、あたしは二人の会話に割って入った。
「話の途中でごめん。あの、藤真? 大丈夫だよ。図書室の先生怒ってはいるけど、本さえちゃんと返してくれれば警察とか、学校には訴えたりしないと思うんだ」
「は?」
 今度は藤真がぽかんとした。





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