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a la carte
雨の日2



 あたしが声を荒げると、ようやく藤真は立ち上がった。
「おう。暁、元気だったか」
「元気よ。1時間前までアンタの隣の席にいましたよ」
 あたしと藤真の席は隣同士だ。帰りのホームルームが終わるまでおしゃべりしてたんだから、元気もなにもないと思うんだけど。
「そうか。1時間ぶりか」
 藤真がニヤリと笑う。
「なに?」
「いや、お前がそんなに俺に会いたがっていたとは知らなかっ――…っ、痛ぇよ暁」
 やれやれ、話すらスムーズに進められないなんて。
 あたしは藤真の右足に体重をかけるようにしてギュッギュッと踏んでやった。もちろん、全体重はさすがに乗せない。
「藤真、夏休みに本借りたでしょ。今持ってるならすぐに返して」
 部活中だから…いや、部活に関係なく藤真のことだから今手元にはないと思っているのに、つい手を差し出してしまう。
「本? 借りたっけ?」
 藤真の目の前で手の平をヒラヒラさせていると、藤真は考え込むように眉宇をよせながらあたしの手をにぎりしめる。
 わ、やっぱり手が大きい。でも、ごつごつしてるのに指が長いからムカツクくらいに目が引き寄せられる。
 自分の肉付きのいい手に溜め息が洩れそうになる。
「はぁ」
 え? 今の、あたしじゃないよね。
「藤真、その辺にしとけ」
 呆れたような声がして振り向くと、花形が苦笑して見ていた。



 あたしの手、もとい、藤真があたしの手にほおずりするところを。



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