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a la carte
俺とあなた 1(幸×主)



 朝の鍛練のため、道場に向かう途中だった。廊下を歩いていると、瑠那どのが自分の部屋に入っていく姿が見えた。
「またあのような恰好で…」
 自然とため息が出る。
 朝早くから瑠那どのの姿を見ることが出来たのは嬉しい限りだが、今見えたように瑠那どのは寝間着のまま出歩いたようだ。異なる世界の未来からやって来たという彼女は、単衣一枚で出歩くことに何の抵抗も感じないのか、見かけるたびにこちらがはらはらする。
 そのたびに単衣一枚では部屋から出ないようにと言い含めてきたのだが…。
「最近ようやく安心できたというのに…」
 どうしたのだろうと、俺は彼女の部屋に行くことにした。


 だがしかし。いくら気になったとはいえ、まだ朝早いこの時間に女子の部屋を訪れることはすべきではなかった。
 瑠那どのの部屋の前で躊躇っていた俺は、こちらに進む微かな足音に慌ててしまい、声を掛ける前に思わず中へ入ってしまったのだ。
 じっと固まっていれば、少しして下働きの下男が部屋の前を通り過ぎて行く。
「――……ふぅ」
 危なかった。見つかれば瑠那どのに対してどのような噂が立つか解らぬ。俺は全然構わないのだが、彼女は俺

が彼女といることで周りから軽んじられるのではと危惧している節がある。
 思いが通じた今日、そのようなことを思わせてしまう己の不甲斐なさを痛感しているところだが、しかし…困った。
 朝の準備のために、他の者も起き出してきたらしい。人の気配があちらこちらでするものだから、出るに出られん。
「♪〜〜〜」
 目の前の襖の向こうからは鼻歌が聞こえている。聞き慣れないが、楽しそうな響きだ。
 不思議な音階につられ近づくと、少し開いた襖から彼女の姿が見えた。
「ッッ!!!!」





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