短編小説
5
それなのに………
「おい…、テメーは…誰だ…?」
「オヤッサン…?」
信士の目が戸惑うように揺れた。
忠明はそのわずかに髭が浮いた頬に指を伸ばし、グイとつねり上げる。
「いてぇっ! 酷いっすよオヤッサン!」
「テメーは…本当に…あのシンなのかよ? オレの後をノコノコついて回る…あの可愛い奴じゃねぇ…?」
「オレはオレっす。ずっとオヤッサンのこと好きだったんですっ」
ガバッと両腕を広げ、信士は忠明の身体を抱きついてきた。
力任せに抱き締められ、息が苦しい。ただでさえ身体がだるくて仕方がないというのに。
忠明は苦しい息の下でうめき声を上げる。
「ね…寝ぼけてんじゃねーだろうな…。溜まってるからって、手近なところで済ませようって…つもりなら…シメんぞ…」
「んなことある訳ないじゃないっすか! 言ったでしょ、オレずっと我慢してたんす。オヤッサンのこと抱きたいって思ってたのを」
「し、シン…! ぐるしいっ…わ、分かったから手を離せ………」
ますます強く抱き締められて、忠明は目を回しかけた。
湿った忠明の髪に顔を埋めながら、信士はきっぱりと首を横に振る。
「嫌っす! こんなやらしいオヤッサンを目の前にして、止められるはずないじゃないっすか!」
「おい、ちょっとまっ…ああっ!」
忠明は激しく仰け反った。
濡れたままの股間に脚を差し入れられ、膝で思い切り擦り上げられたのだ。
そのまま膝頭でグリグリと褌の上から陰茎をこねられて、再び腰がうねりだす。
動く腰に、信士の太い剛直が当たった。まだ熱く勃起している。
やはり、本気なのか。
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