短編小説
8
そう認識した直後だった。
地面に広がる本体が、パクリと割れた気配がした。
粘液を纏った無数の触手が、本体の割れ目からズルズルと這い出してくる。
「や……やめろっ! 来るなぁ!」
ゾッとして片桐は叫んだ。
その開いた口に、触手の一本が勢いよく突っ込んできた。
ウゲッと吐き出そうとしても、グネグネと蠢く触手は出ていくどころか片桐の口中を思うがままに蹂躙する。
噛み付いてやろうとしても、粘液のせいでろくに歯も立たない。
舌で押し出そうとしても、触手はかえって悦んでいるように、その舌に絡みつく。
気がつけば、触手は片桐の口で激しくピストン運動をしている。
口の端からは粘液が滴り落ち、触手が出入りするたびにズチャズチャと音を立てて泡立つ。
赤ん坊の腕ほどの太さの触手は、飽かず片桐の口に押し入っては中を蹂躙して抜け落ちるギリギリまで出ていき、そしてまた突き入れてくる。
息苦しさに、片桐の眦に涙が滲む。首を振って逃れようとするが、触手は巧みに動いて逃さない。
数え切れないほど突き入れられて、片桐は朦朧としてきた。きっと酸欠だろう。
霞がかった頭で、ふと思う。
これは、まるで……
まるでフェラチオをしているようではないか。
「うっ……うげっ……!」
こみ上げる嫌悪感に、片桐はえずく。喉を鳴らしても触手は抜けず、いたずらに涙と鼻水ばかりが出てくるだけだ。
それでも首を振って逃れようとしたときだった。
股間に違和感が走った。
粘液でぐっしょりと濡れそぼるジーンズの中に、触手が入り込んできたのだ。
器用にもベルトのバックルを外し、ボタンをもとる。
「んっ……んんーー!」
下着の中にまで入ってきた触手は、縮こまっていた片桐の陰茎に絡みつく。
濃い茂みをグシャグシャに濡らしながら異物は性器を呑み込むように巻きつき、わずかに締め上げながら幹を上下にしごく。
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