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短編小説
5


「あんの迂闊で粗忽な野郎どもめ……」



 一条の光も無しに洞窟内を歩く趣味はかけらもない。そもそも、もともと満願成就を求める気持ちすらないのだ。

 片桐は、扉があるであろう方向へと踵を返す。

 しかし次の瞬間、足元をすくわれて再び地面に転がった。



「なんだぁ? 何が起きたんだ、コンチクショウっ」



 悪態をつく余裕があったのは、ここまでだった。



「うわっ!? ひっ、引っ張られる……!?」



 自分が倒れたのは、足が何かに引っかかったのではない。

 何かが足首に絡み付いてきたせいだ。

 深い闇に包まれて一寸先も見えない状態だから、何が巻きついたのかは分からない。紐状のものだということくらいは、ズボンの生地越しの感覚で判断できるが。

 その紐状の何かはしっかりと足首に絡みつき、グイグイと引っ張り続ける。



「な……なんなんだこりゃ……? まさか蛇……?」



 果たして、足に絡みついて引っ張る蛇などいるものなのだろうか。

 漠然とした疑問と不安はあるが、いつまでもこんな所で拘束されていたくない。

 冷たい地面に転がったまま、片桐は足首のそれを取り去ろうとした。

 取るには、まず腕を足元に伸ばさなければならない。そのためには、体をひねらなくてはならない。

 まずは体をひねるために、片桐は腕を地面につこうとした。

 刹那。



「うぎゃぁっ!?」



 片桐の口から野太い絶叫が迸った。

 地面についたはずの右手が、ウネウネと蠢く何かに絡めとられてしまったからだ。



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