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短編小説
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 まあ、自分も真面目とはとても言えないが……と軽く自嘲しながら誘いに乗ってみれば、某観光地からやや外れた山中にあるここ「秘宝館」に連れてこられたというわけだ。



 秘宝館――それは全国にポツポツと存在する、文字通り「秘めたお宝」の博物館だ。股間がやけにリアルな全裸の弁天像や、どう見ても巨大な男性器だろうご神体、春画を代表とする男女の絡みが実に精密に描かれた絵など、エロスに関するさまざまなグッズが陳列されている。



「何でって? 彼女いないんなら溜まっちゃうだろ? 溜まると体に悪いじゃん」

「そうですよ。俺たちはセンセイの抑圧された性欲を健全に解放してあげるべく知恵を出し合ったんです。ヘルス系を紹介するのは学生らしくないだろうとも考えて。だからテレビは諦めてください。だいたい、そんなに見たい番組なのに録画しないとは何事ですか。しかも再放送狙いとは片腹痛い」



 浦田の横で、部内で一番弁が立つ横坂が冷静に言う。メガネなどかけてインテリぶってはいるが、所詮は浦田たちと変わらぬアホである。



「……なんで彼女いないことイコール抑圧された性欲になるんだ。俺はてめえらみてぇなやりたいだけのガキじゃねぇんだよっ」

「またまたぁ。枯れるにはまだ早いだろ? 悶々とした夜をすごしてんじゃないの? 無理すんなよ」

「やかましいわ、ボケ! なぁにが溜まってるってんだ、ああん? 悶々とした夜ってのはどういう意味だ、こらぁ!」



 片桐はキレた。

 素晴らしい速さで腕を伸ばし、ふざけたことをほざき続ける浦田をヘッドロックして締め上げる。

 横坂が冷ややかな一瞥を投げてきた。



「入り口近辺で騒ぐのは迷惑行為ですよ」

「………」



 確かに施設の前でたむろされるのも、溜まっているだの性欲だの大きな声で喚かれるのは相当迷惑だろう。

 いくら不真面目とはいえ、仮にも教師という立場の人間がすべきではない。

 反省した片桐は、結局生徒たちの勢いに押されて館内へと足を踏み入れることになった。



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