短編小説
5
「ぐっ、ぐふっ……」
あられもない声が出そうで、慌てて蛍光灯を噛んだ。硬いガラスに歯が立つわけもなく、中途半端に開いた口の端から涎が滴る。しかし声を抑える役にだけは立つようだ。
もう片方の手は、翔一の頭に添えられていた。
不埒な真似をする若造を押しのけようとしての行動だったはずなのだが、気がつけば強請るように長めの髪をかき回している。
次第に慣れてきたのか、翔一は舌も使うようになった。
裏筋を舐め上げ、先端の膨らみに舌を這わす。まるでじっくりと味わっているようだ。
「はっ…藤堂さんっ……」
息が切れたのか、わずかに口を離して翔一が言った。その声は興奮のせいかわずかに掠れている。
いつもは飄々としていてとらえどころのない若造が、一心不乱に動いて息を乱している。
それを意識したとたん、藤堂はカッと赤くなった。
羞恥のせいで赤面したのだが、そこにはいくばくかの興奮が混じっている。
そんな藤堂の顔を、翔一は長い前髪の隙間から窺っていたらしい。
「藤堂さん、可愛い……」
誰が可愛いじゃ、ボケが。
普段の藤堂だったら、そう罵倒したことだろう。頭の一つも叩いたに違いない。
しかし快楽の中枢を刺激され、興奮もあらわな艶めいた声で言われると、腹が立つどころか背筋がゾワゾワしてしまう。
翔一が舌を使い出してから、ますます濡れた音が響くようになってきた。
あまりに淫猥なその音に、藤堂の尻は小刻みに痙攣する。
もう許してくれ。
柄にもなく泣き言を吐きたくなり、鼻息を漏らしながら口を押さえていた指に歯を立てた。
股間から溶けていきそうだ……
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